『華麗なる一族』のモデル・山陽特殊鋼が新日鉄住金の子会社に

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 先の古参記者が続ける。

「小説では、富士製鉄をモデルにした『帝国製鉄』が登場しますが、山陽特殊鋼が復活できたのは、やはり富士製鉄のお蔭でした。破綻の際には8人の役員を送り込み、技術的にも全面的に支援したのです」

 それもあって、同社の業績はV字回復、80年には再上場に漕ぎ着ける。新日鉄系となった山陽特殊鋼は一時、新日鉄傘下の電炉メーカーに吸収合併される話も持ち上がったが、独立の気風が強い同社は、社長の派遣を受けながらも独立路線でやってきた。

 最近の業績も好調そのもので、営業利益率は約7%と、鉄鋼メーカーとしては優良企業だ。それが、ここに来て新日鉄住金の軍門にくだったのはどうしてなのだろうか。今回、同社は新日鉄住金の子会社になるとともに、増資で得た資金でスウェーデンの特殊鋼メーカーを傘下に入れる。ジャーナリストの小宮和行氏が言う。

「新日鉄住金に限らず、鉄鋼産業の業績は自動車メーカーの動向に影響されるものです。一方、近い将来、世界中でEV(電気自動車)が普及するのは確実で、自動車業界に大きな再編をもたらすと言われている。そのため新日鉄住金は山陽特殊鋼の経営をグリップし、自動車用の特殊鋼の販路を広げておこうと考えたのでしょう」

 鉄鋼業界の暴れん坊と呼ばれたのは半世紀以上前のこと。“鉄の秩序”に山陽特殊鋼も、従うしかないのだろう。

週刊新潮 2019年3月14日号掲載

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