「がん検診」がむしろリスクに? 年齢上限がないのは日本とドイツだけだった
上限なしは日本とドイツだけ
国立がん研究センターの中山富雄・検診研究部長も、こう明かす。
「私は現在、厚労省の研究班で『高齢者の検診問題』をテーマに研究しています。実は数年前、大腸内視鏡の先生から『90代の患者さんが内視鏡検査に来たので、危険だからと断ったら“よそでは診てもらった”と言われ、押し問答になった』と相談されたのです。偶発症の事故は非常に危険なので、現場の医師は必死です。聞けば、こうしたトラブルは各地で起きているといい、海外の状況を調べ、日本はどうすべきなのかという研究が始まりました」
とのことで、
「たとえば米国では、国のガイドラインで、医療保険を使った大腸がん検診は75歳までと決まっています。英国も同様で、先進国で上限が定められていないのは日本とドイツだけ。2009年に米国で発表された論文では、大腸内視鏡検査に伴う偶発症や事故の発生率が、年齢とともに高くなることが判明しました」
それによれば、
「腸に穴があく『穿孔』や出血などのリスクは66~69歳では千人あたり5人なのに、70~74歳で5・8人、80~84歳で8・8人、そして85歳以上では12・1人に増えました。絶食して下剤を飲むことで誘発される脳梗塞や心筋梗塞も、66~69歳では千人あたり12・6人だったのが、85歳以上では31・8人にまで上ったのです」
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