「心愛さん」虐待死事件 3回逮捕の父親に下されるあまりに軽い“量刑”への疑問
過去の判決には執行猶予も
千葉県野田市の小4・栗原心愛さん(10)が虐待により死亡した事件で、千葉地検は3月6日、父親の栗原勇一郎容疑者(41)を傷害致死と傷害の罪で起訴した。
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地検は起訴状などで、約49時間に及ぶ栗原容疑者の虐待行為を詳細に記述し、新聞社などが記事として伝えた。各紙の報道を要約してお伝えする。
◇1月22日午後10時から、栗原容疑者は心愛さんに食事を与えず、肌着だけの姿で、まともに眠らせていなかった。
◇1月24日午後1時頃、「5秒以内に服を脱げ。5、4、3、2、1」と命令。肌着は濡れていたが、ボウルで冷水を頭や体にかけた。さらに「シャワーで流せよ。お湯じゃないだろう。なんでお湯なんだ」と言い、冷水をシャワーで浴びせた。
◇同日午後4時頃には心愛さんにまたがり、プロレス技のように両足をつかんで体を反らせる暴行を加えた。
◇同日午後9時50分頃。寝室に入ろうとした心愛さんを「なんでいるの。ダメだから。ちょっと来い」などと命令。再び浴室に連れ込み、シャワーで顔に冷水を浴びせ続けた。心愛さんは午後11時10分頃、浴室で死亡した。
千葉県警は翌25日、心愛さんに対する傷害容疑で栗原容疑者を逮捕。2月14日には、昨年12月下旬にも暴行を加えた疑いが強まったとして再逮捕。3月8日にも心愛さんに対する暴行容疑で再逮捕。これで逮捕は3回目となる。母親のなぎさ容疑者(32)も傷害の幇助罪で逮捕・起訴されている。
心愛さんは小学校で行われたアンケートで、父親から虐待を受けていることに助けを求めていたが、それが記されたアンケート用紙のコピーを、栗原容疑者の要求に屈して渡していた野田市への批判も根強い。
とはいえ、栗原容疑者に対する世論の批判と比べれば、レベルが全く違う。例えばツイッターに「栗原勇一郎 死刑」と入力すると、多数のツイートが検索される。代表的なものを3つ紹介させていただこう。一部は改行などを省略した。
《いまだにしつけだ悪い事をしたつもりはない。ってほざいてんなら死刑にしていつ執行されるか分からん恐怖味わったらいい。ちなみに毎日恫喝暴行、真冬に肌着で放置。五秒以内に服を脱がせて冷水かけて胸骨骨折させてその上に乗って体反らす。心愛ちゃんにした事毎日味わえ》
《栗原勇一郎のようなのが死刑でもなく、10年とかで出てこれるなら…そんな世の中で良いのだろうか? 子供に暴力ふるい、冷水あびせ、さらに暴行。しかも3日も食べさせない寝かせないって…親がする事というよりも、人がする事ではないよ…》
《栗原勇一郎。まさか自分の実の娘を虐待して、それを動画で残すなんて、異常性癖だろ。死刑じゃぬるすぎる。絶対に反省などしないから、毎日拷問にかけて心愛ちゃん以上の苦しみを味わってほしい。酷すぎる》
同意する向きも少なくないだろうが、実際のところ、子供に対する虐待で極刑が科された例は皆無だ。傷害致死罪と殺人罪で起訴された近年の事件から、判例を見ていただきたい。まずは被告が「傷害致死罪」などで起訴された裁判の判例だ(表1)。
次は「殺人罪」で起訴された裁判だ。2つの表は基本的に、最新のものから無作為に5つの判決を選んだ。ところが、傷害致死罪で最も古い判決が18年5月なのに対し、殺人罪では13年3月まで遡ってしまった。
つまり、子供への虐待事件では、傷害致死罪での起訴が多く、殺人罪での起訴は少ないことが透けて見えるわけだが、それでは殺人罪の判例をご覧いただこう(表2)。
2つの表にある10の判決を見れば、最年少の被害者は生後3か月、最年長でも僅か9歳に過ぎない。大人による理不尽な暴力で命を奪われた、という事件ばかりだ。しかしながら、表のどこにも「死刑」の文字はない。
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