「老化タンパク質」新たに解明で人生100年超えなるか
紀元前49年、将兵を率いたユリウス・カエサルは禁を破ってルビコン川を渡る。ローマに凱旋し、腐敗した政治を改めるためだった。そのルビコンの名が付いたタンパク質が、長寿と深い関わりがあると明らかにされたのは、2月19日のこと。大阪大学大学院の吉森保教授らが、学術誌(電子版)で発表したのだ。
それによると、細胞は「オートファジー(自食作用)」によって新陳代謝を繰り返すが、ルビコンが増えるとオートファジーが抑えられてしまう。つまり、老化が進むのだ。オートファジーといえば、大隅良典氏(東工大栄誉教授)が仕組みを解明し、2016年にノーベル賞を受賞したのはご存じのとおり。吉森教授は、大隅氏の“弟子”でもある。吉森教授が言う。
「1996年に大隅先生が基礎生物学研究所に来られた際、私が助教授として呼ばれ、哺乳類の細胞を調べはじめたのがきっかけでした」
何度も失敗を繰り返し、未知のタンパク質にたどり着いたのは09年だった。
「長寿のメカニズムは複雑ですが、どんな人が長生きするかは知られています。たとえばカロリー制限で痩せていること。また、性的に中性であることなどです。二つに共通しているのが、この未知のタンパク質が少ないことでした。そこで、ルビコンと名付け、マウスやハエなどで試したところ、ルビコンのない個体はオートファジーによる新陳代謝が活発で、約1・2倍長生きすることが分かったのです」(同)
まだ時間はかかるが、将来は長寿薬の開発も考えていると吉森教授。「人生100年」の時代は、案外近くまで来ているのだ。