女児への「強制わいせつ致傷」で逮捕の男、女子中学生を殺害の過去 繰り返された性犯罪
不利益変更の禁止
ここまでが寺本の犯歴の概要となる。ファイルの内容を一言で表せば“性犯罪常習男”であろう。そんな彼は、女子中学生2人殺害の判決確定までに控訴と上告を繰り返していた。彼自身は東京の17年、長崎の15年ともに判決が軽いと“極刑を希望”していたのだが、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士によると、
「刑事訴訟法に“不利益変更の禁止”の規定があります。被告人側がいくら極刑を望んで上訴しても、すでに出ている判決より重い判決は下せないのです。反省の態度が顕著と判断してもらい、刑の軽減を狙っていたのかもしれません」
寺本の思惑はともかく、2人も殺しておいて、本人ですら望んだ極刑にならないとはどういうことか。その点を、元裁判官の森炎(もりほのお)弁護士はこのように見ている。
「たしかに、今回の被告人が過去に起こした殺害事件は、市民感覚として“こんなことがあっていいのか”との見方があるのは当然です。ただし、東京の事件で一審の審理が終わるのとほぼ同時に被告人の手紙が送られています。長崎県警は被告人が手紙に嘘を書いた可能性を検証したり、手紙をもとに捜査し、立件できるかを判断する時間が必要だったはず。わずかでも極刑の可能性があった併合審理にならなかったのはやむをえないでしょう」
制度の隙間をつくケースといえよう。そしてそれが、結果として性犯罪常習者の再犯にもつながっていった。
(2)へつづく
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