「常盤貴子」「竹内結子」「木村佳乃」 人気女優の冬ドラマはなぜパッとしないのか?

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迷走する竹内、的確な木村“多江”

 同じようなことは、竹内結子と「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」(フジ系・木曜10時~)についても言わなきゃなりません。スキャンダルに巻き込まれたクライアントをメディア操作・世論操作で救う弁護士事務所の女チーフにして危機管理専門家──いや、いるでしょう他に、そんな役柄に合う女優は。万一いなかったとしても、竹内に振る役じゃないでしょうが。

 ま、30代・40代は女優にとって難しいお年頃で、それまでとは違う役柄への挑戦が求められたり、あるいは、それまでと似たような役柄を続けることもまた挑戦になったり。いずれにしても挑戦であるからこそ、当人および周辺の思慮および配慮が強く求められるはずなのに、「QUEEN」の竹内の場合もまた、その思慮配慮その他いろいろが感じられない。

 竹内結子という女優は、顔立ちには凛としたところがあって、ボーイッシュという形容が似合っていた時期さえありました。他方、言動は娘々していて柔らかい印象があり、離婚のときも一方的な被害者という立場がよく似合ってたんだけれど、その後だよなぁ、なんだかちょっと風向き、というより舵取りが変わったのは。

「ストロベリーナイト」(フジ系/12年)の刑事・姫川玲子役が当たって、それ以降、連ドラでは労働基準監督官だのデパートの外商担当だの女医だの、フルタイムでカッチリ働く女ばかりを演じ続けるも、こちらはそうはパッとせず、今回が弁護士。こういう役柄のインフレ、キャラクター進化の猪突猛進が来るところまで来た感は、木村拓哉(46)がついに総理大臣に擬せられた「CHANGE」(フジ系/08年)が思い出されるほどです。

 ご存知のとおり「CHANGE」は、当時35歳でアラサーとアラフォーの四捨五入の境界線上、アイドルとしちゃ微妙な年代にあったキムタクの迷走の象徴みたいなドラマ。「木村拓哉総理」と「竹内結子弁護士」という座りの悪い字ヅラ・響きに共通する違和感・ツギハギ感・企画モノ感にあらためて触れると、「QUEEN」もまた竹内にとって迷走だなぁと思われてならないのよ。

 そして、視聴率がメタメタで女優としての価値暴落中……みたいなキツい記事が出始めたら結婚ですよ、結婚。別に驚きゃしないんだけどね、深田恭子だって「初めて恋を」の数字が低迷するタイミングで熱愛報道が再燃するってのが、このギョーカイだもの。ただ、深キョンも竹内もアラフォーの独り身、好いた惚れただの、付いた別れただのが女優としての宣伝広告になる季節の終わりが見えてきてる時期だけに、溺れる者が藁……の図に見えちゃうのが寂しいところで、たとえば竹内、「QUEEN」が好調だったとしたなら、結婚がこのタイミングで公表されたかどうか。

 さて、やや面白いことに、今回ご紹介の常盤貴子と竹内結子はどちらもスターダスト(プロモーション)の所属。連ドラの主役を押さえられたかという視点での評価は「スターダスト、今期は頑張ったな」である一方、それで所属タレントの価値を上げられたかという視点だと、竹内の結婚(相手は同じ事務所の後輩)発表まで含め、「スターダスト、今期はしくじったな」という評価になりそうだとして、それはまぁ、アナタにとってはどうでもいい話でしょうか。

 で、最後はワタシにとってもどうでもいい話。平成最後の1~3月期、ぞろりと揃ったアラフォー・アラフィフ女優主演5題噺で最後に残ったのが木村佳乃の「後妻業」(フジ系・火曜夜9時~)ですが、一部で話題になってる木村の体当たり調演技に、どうも食指が動きません。

 ドラマのつくりが関テレ(関西テレビ)制作枠特有の、トロみは濃いのに具は乏しいカレーのような安さ爆発状態であるのは笑えるし、木村の熱演あるいは怪演も可笑しいと言えば可笑しいんだけれど、「後妻業」鑑賞で湧いてくる笑いは、コメディを見ての笑いじゃなくて、バラエティを見ての笑い。

 ジャニーズの少年隊ヒガシの妻にして、NHKのバラエティで所ジョージのパートナーも務めるという“非女優”としての存在感が膨らむばかりの彼女が、連ドラ主演女優としてグイグイ押し付けてくる力業の悪女芝居はなんだか、「新春かくし芸大会」あたりで披露されるべき余技に思えちゃってね

 そういう「後妻業」にもかかわらず、第3話くらいで見捨てることができなくて今なおチェックを止められないのは、作品全体がどこまで墜ちるのか見届けたいという怖いもの見たさがひとつだとして、もうひとつの理由は、そんなユルいつくりのドラマにおいて準主演格の木村多江が繰り出し続けてる、なぜだかいちいち的確な芝居。いま調べ直してみたら多江の方の木村もこの3月で48歳という、立派なアラフィフ女優でした。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班

2019年3月4日掲載

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