評論家は巨人「丸佳浩」の仕上がりを“完璧”と絶賛、それでも心配な“4つの落とし穴”

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4つの落とし穴

「昔の広島市民球場なら野次り倒されたでしょうが、今の広島ファンは丸くんを温かく迎えるでしょう。しかし広島の選手、特に投手は、絶対に丸選手から打たれるわけにはいきません。意地とプライドをかけ、全力で抑え込みにかかるはずです」(同・小田氏)

 百戦錬磨のベテラン選手でも、開幕戦のプレッシャーは段違いだという。打者にとってはヒット1本さえ打てれば、あとは3三振でも構わないというほどの緊張感なのだ。

「ただでさえ神経を使う開幕戦ですが、丸くんの場合は、自分が活躍したマツダスタジアムで、かつての仲間を“敵”にして戦うという要素も加わります。精神的な負担は並大抵なものではないでしょう。広島以外の4球団と開幕戦を戦うほうが、遥かに楽だったはずです」(同・小田氏)

 開幕戦の相手が広島というのが1つ目の落とし穴というわけだが、丸が受ける開幕戦の“洗礼”は他にもある。やはり巨人はスター球団。スポーツメディアの尋常ではない報道量に、丸は初めて接することになる。これが2つ目の落とし穴となる危険性がある。とにかく気が抜けないのだ。

「広島も地元メディアが頑張っていたと思いますが、やはり巨人の比ではありません。開幕戦はメディアが煽りに煽るでしょう。そして試合が終われば、打てたら大絶賛ですが、打てなければ厳しく批評されるに違いありません。読売グループのスポーツ報知は、巨人の選手にも容赦しません。一挙手一投足を細かく伝えられ、全てが批評の対象になるという感覚は、丸くんには初めての経験だと思います」(同・小田氏)

 丸の記事には「優等生」という見出しが付くことがある。「『優等生』丸佳浩は、巨人の洗礼に耐えられるのか」(J-CASTニュース:18年12月13日)という具合だ。

 人間性を評価されていることは言うまでもないが、それが悪い方向に作用する危険性もあるという。それが3つ目の落とし穴だ。

「丸くんは責任感が強いですから、『絶対に成績を残す』と誓っているはずです。高いモチベーションが好成績を生むこともありますが、身体のどこかに無駄な力が入っていれば厄介です。FA組の打者で成績が低迷する時、力みが原因であることが少なくありません。気負いが空回りしてフォームが崩れ、打てなくなってしまうんです」(同・小田氏)

 丸自身の調子は悪くないのにチームが低迷していると、それに「引っ張られる」ケースもある。これが4つ目の落とし穴だ。

「チームの負けが込むと、やはり選手は伸び伸びとはプレーできません。ベンチもバントや盗塁、“待て”のサインなどを多用します。積極的に『ヒットやホームランを狙っていこう』とはならず、自分がアウトになってでもランナーを進塁させる打撃が求められたりします。丸くんはチームプレーに徹するでしょうから、巨人の調子が悪いと、なかなか個人成績を伸ばしにくい状況に陥る危険性もあります」(同・小田氏)

 小田氏は2006年から14年まで、中日で捕手のマスクを被った。そして11年までは落合博満氏(65)が監督だったため、直接の指導を受けている。その経験から小田氏は「FAで強い選手は、落合さんのようなタイプです」と断言する。

「落合さんこそマスコミから毀誉褒貶あった人ですが、全く動じませんでした。常に自分を冷静に見つめますから、余計なプレッシャーとも無縁です。巨人に、しかもFAで入団して活躍するには、丸くんのような“優等生”タイプではなく、落合さんのような“オレ流”のほうが向いているのは間違いありません」

 落合博満氏は1986年、講談社から『なんと言われようとオレ流さ』を上梓。その中で「自分を追い詰めない」ことを重要視している。以下の引用は、改行だけ省略させてもらったが、後は原文通りだ。

《オレは闘志をむき出しにしてまで、打ちたいとは思わないから。その日は四タコ(四打数ノーヒット)でも明日は一本出るだろうぐらいにしか考えない。前にも言ったけれど、バッティングなんて、百三十試合おしなべて何本打つか、だもの。ボールが見えない日は、ごめんなさいして全部三振すればいいの。くよくよせずにあきらめる。そのほうが結果的にはいい。スランプになると、どんどん落ちこんでいくタイプの選手のほうが多いけれど、それは損だ。人間あきらめが肝心。野球選手も気分転換の早い者が勝ちだ》

 いかにも落合氏らしい発言だが、広島OBである北別府学氏(61)もサンスポの「北別府氏、FA丸は落合博満氏の『メンタル、度胸を見習って欲しい』」(18年11月26日電子版)で、小田氏と全く同じアドバイスを披露している。

 更に元ヤクルトの若松勉氏(71)もサンスポの取材で巨人のキャンプを訪れ、丸に紙面で「小さくならずに自分のバッティングをすべきだ」とアドバイスしたのも同じ懸念からだろう(「『若松勉 キャンプCHECK』不慣れな2番を打つ巨人・丸、小さくならずに自分の打撃を」2月21日電子版)。

 果たして、丸は図太くなって開幕戦の第1打席を迎えられるか。多くのファンが注目している。

週刊新潮WEB取材班

2019年2月27日掲載

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