手の平は上に、声は高く… 心理学で読み解く「アイドル」の握手会マル秘テクニック
無意識の声の高さでファンは悩殺されている
神対応ができるアイドルは、ファンから何を言われても即座に気の利いた返しができたり、ファンの顔と名前を覚えて自分から名前を呼んだりと、会話においてもサービス精神が旺盛だ。特筆すべきところで、須田亜香里は、ファンひとりひとりの名前や特徴、握手会で話したことや受け取ったファンレターの内容を書き留めた「ファン情報ノート」を作っているという。
さらに、相手が心地よくなる「声色」というのもある。
「実は会話の内容以上にファンの心を掴むのに重要なポイントがあります。それは声の“高さ”です。人は『ソ』か『ラ』の音階がもっとも心地よく耳に響き、心が弾むといわれています。つまり、『ソ』か『ラ』の高い声で話せば、会話の内容がシンプルでもファンは高揚し、『この子と話すのは楽しかったな、また会いたいな』と思うのです」
しかも、アイドルの多くはこの声色を無意識のうちに使っているという。
「これまでの人生経験の中で知らず知らずのうちに対人スキルが磨かれていくと、無意識にこうしたコントロールができるようになるんです。ほかにも、相手の目を見ながら口角を上げて微笑み、『私はあなたを受け入れていますよ』と安心感を伝えることも、アイドルが無意識に行っているコミュニケーション術のひとつです」
「自分を認めてほしい」という承認欲求の強い人間ほど、アイドルにハマりやすいのだろう。
触る、話す、見る、微笑む、トドメは「嗅がせる」
握手の仕方、会話の内容以外にも、アイドルたちはさまざまな趣向を凝らしている。筆者が実際に体験したところでは、アロマテラピー検定2級の資格を持つNMB48の大段舞依(24)が、自分のブースにアロママシーンを設置していた。カモミールやラベンダーなどの香りがあたりにたちこめていたわけだが、これには、どんな効果があるのだろうか。
「人間は危険をいち早く察知するために嗅覚が鋭く、新しい空間に入ると真っ先にニオイに意識がいきます。そのため、良い香りをさせておくと、出会ってすぐに好印象を抱かれやすいのです。とくにフローラルな香りとフルーティーな香りは、国籍や文化を問わず、老若男女誰もが好む香りなので、花か果物の香りを身に纏えば一瞬で好かれるはずですよ」
内藤氏によれば、人間がまだ狩りをして生活していた頃、果物や、その果物を実らせる花は命をつなぐ食糧として大変重宝されていた。人間の進化にこういった背景があるため、花と果物の香りは潜在的に万人受けするというわけだ。
「脳と鼻は近い位置にあるので、良い香りを放つことは、物理的な触れ合いよりも強く相手に影響を与えるかもしれません。香水ならすぐ手に入りますし、花と果物の香りなら失敗もないでしょう」
平成の「アイドル戦国時代」には、歌や踊りなどの「芸」に自信がなくても、握手会で人気を獲得し、メディアへの露出を増やしていったアイドルが数多くいる。彼女たちが何気なくしている握手には、これらの秘密のテクニックが駆使されていたのだ。
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