沖縄県民投票、辺野古反対“37.6%の民意”はなぜ説得力に欠けるのか

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文/篠原章(評論家)

2月24日、辺野古埋立てをめぐる沖縄県民投票が終わった。当日の有権者数1,153,591人に対する投票率は52.48%、「賛成」114,933票(得票率19.1%)、「反対」434,273票(得票率72.2%)、「どちらでもない」52,682票(得票率8.8%)という結果を得た。

 今回の県民投票条例では、いずれかの回答が有権者総数の4分の1以上に達した時、知事はその結果を告示し、尊重するとともに、日米両政府に通知することになっている。玉城デニー知事は、できるだけ早く上京し、安倍首相に投票結果を正式に通知する予定だという。

 週刊新潮2月28日号で筆者は「投票率は50%前後」と推定したが、これについては予想の範囲内だった。他方、「“どちらでもない”が意外に伸びて“30〜40%”」とした予想ははずれた。読みがはずれたのは、主に「法的拘束力のない県民投票だから、“どちらでもない”を選ぶ可能性のある県民は投票所までわざわざ足を運ばない」という可能性を過小評価したことに拠る。この点は率直に反省しなければならない。

 今回の投票で最も注目すべき点は、「反対票の有権者数に占める比率」だった。有権者数1,153,591人に対するその比率は37.6%である。有権者の過半数には届かなかったことになるが、「埋立て反対」を唱えてきた人々のあいだでは、「1票でも多ければ勝ちは勝ちだ」との主張も多い。

 たしかに、衆院の選挙区選挙や知事選、首長選などの場合、投票率がどんなに低かろうが、候補者の中で最高の得票を集めれば、あるいは、他候補を1票でも上回れば当選となる。が、今回のようなシングル・イシューを三択で争う県民投票の場合、最高得票を集めた選択肢を「当選」と同様に扱うことには疑問がある。「県民の37.6%が反対だから埋立ては中止すべきだ」という物言いに説得力があるだろうか。埋立て反対派は、昨年9月30日に行われた県知事選で玉城知事が獲得した39万票を上回る43万票を獲得したことで俄に活気づき、埋立てを中止に追いこもうと血気盛んだが、「37.6%の民意」ではお世辞にも十分とは言いにくい。

 前掲の週刊新潮で指摘したことだが、1996年9月8日に大田昌秀知事の下で行われた「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票」での投票率は59.5%だった。うち89.1%、48万2538人が「基地の整理縮小に賛成」に投じた。これは当時の有権者総数の過半数に達し(53.0%)、数字としては説得力があった。法的拘束力はなかったが、政府がこれを「民意」として受け止め、基地縮小プログラム(沖縄に関する特別行動委員会〈SACO〉最終報告:1996年12月2日)を策定して実施してきたことは紛れもない事実である。「普天間飛行場の辺野古移設」もその一環であり、基地縮小の最大の目玉だったことを忘れてはならない。

 今回の「37.6%の民意」が、辺野古移設を進めている政府に対する圧力として作用するかといえば、残念ながら「否」と答えるほかないだろう。良くも悪くも政府の決意は揺らがないように見える。1996年の県民投票における「53.0%の民意」を出発点の一つとする辺野古移設を、2019年の「37.6%の民意」が覆そうとする「捻(ねじ)れ」は、やはり不可解だと感じざるをえない。「もっと愛してほしい」と言われ一生懸命愛し貢いできたが、今度は「おまえの愛などいらない」と言われているようなものだ。政府内部にもそうした思いは根強いだろう。

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