厚労省「統計不正」で春闘に影 経団連「中西会長」の勝算
今年も春闘のシーズンがやって来た。安倍政権の賃上げ要請により、ここ数年は労働組合の要求額に近い額を回答する企業も多く、“官製春闘”の色合いが濃厚だった。しかし、統計不正問題が春闘にも影を落とし、労組には正念場の年になりそうだ。
昨年5月に就任した経団連の中西宏明会長(72)=写真=と、連合の神津里季生(りきお)会長(62)の労使トップ会談が2月5日に行われ、春闘の幕が切って落とされた。会談冒頭、中西会長は“賃金上昇の勢いを消さないように議論したい”と語り、労組の主張に一定の理解を示したようにも聞こえたが、
「中西さんの発言を額面通りに受け止めることはできません」
こう警戒するのは、連合の幹部だ。
「連合は、月給を底上げする2%のベースアップを加えた4%の賃上げを要求する方針。2014年から昨年までは2%前後の賃上げを勝ち取った。中西会長はベースアップではなく、ボーナスを含めた年収でのアップを主張している。賃上げを一時的なものにしたい意向で、労組の考えとは大きな隔たりがあります」
労使トップ会談の直前、中西会長と言葉を交わしたという財界人によれば、
「中西さんは上機嫌で、“安倍総理は3%の賃上げを求めて、我々は昨年まで2%前後で回答してきた。連合は、今年もベースアップを要求してくるでしょうが、彼らが根拠にする数字が根本から崩壊しているので、話になりませんよ”と、余裕の笑みです」
中西会長がいう数字とは、厚労省による統計不正が明らかになった毎月勤労統計調査のデータだ。先の連合幹部は、
「経営者に賃上げを求める上で、毎月勤労統計調査のデータは非常に重要。これまで交渉のテーブルで経営者から“何を根拠に賃上げを求めるのか”と問われたら、そのデータを上げていたので、この数字が嘘だったというのは痛い」
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