第3の選択肢「どちらでもない」が人気という「沖縄県民投票」の空騒ぎ
文/篠原章(評論家)
「辺野古埋立て」の是非を問う県民投票は、2月24日。一時は五つの市が不参加を表明していたが、「賛成」「反対」に「どちらでもない」という選択肢を加えることで、何とか全県投票にこぎつけた。しかしその第3の選択肢こそが沖縄の民意だという声もあって――。
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普天間基地の辺野古移設に伴う埋立ての是非に関する県民投票を2月24日に控えて、沖縄県当局はテレビCMを頻繁に流し、あちこちにポスターを貼るなど積極的に投票を呼びかけている。だが、投票がいかなる帰結をもたらすのか、その先行きは今も不透明だ。
昨年10月に県議会で承認された県民投票条例の当初案では、「賛成」「反対」の2択だった。これに対し、保守系の首長をいただく宜野湾市、沖縄市、うるま市、石垣市、宮古島市の5市が、「2択では多様な民意を吸収できない」との理由から、投票実務に関わる予算案を議会で否決して参加を拒絶し、一時は全県投票が危ぶまれていた。今年1月下旬、玉城デニー知事を支援する県政与党の一部があらたに「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択案を提案、不参加を表明していた5市がこれを受け入れて、ようやく全県投票が可能になるという経過をたどってきた。
県民投票に法的拘束力はないが、今回の条例では、いずれかの回答が投票資格者(有権者)総数の4分の1以上に達した時、知事はその結果を告示し、尊重するとともに、日米両政府に通知することになっている。
「政府の基地政策への反対姿勢」を半ば矜恃とする沖縄県民の多数派民意が「埋立て反対」として示されることはほぼ間違いないが、焦点の一つとされるのは投票率の高低だ。
1996年9月8日に大田昌秀知事の下で行われた「日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票」での投票率は59・53%だった。うち89・09%、48万2538人が「基地の整理縮小に賛成」に投じた。これは当時の有権者総数の過半数に達し(53・04%)、数字としては説得力があった。
今回も1996年に準ずる数字が示されれば、埋立てを続ける政府に対する一定の「圧力」として作用するだろうが、必ずしも「埋立て反対」派に有利な数字がもたらされるとはかぎらない。
1990年代の国政選挙や知事選挙で示された投票率は70%を超えることもあり、直近の知事選の投票率63%とは10ポイント程度の開きがある。この「差」を参考にすれば、今回の投票率は50%前後となる可能性が高い。
現時点での有権者数は約116万人。たとえば投票率が55%(投票者約64万人)の場合、投票者の約91%(約58万人)が「反対」に投じれば、有権者の過半数に届くことになる。だが、91%を達成する可能性は低い。
「埋立て反対」の立場から県民投票の実施のための署名集めに奔走した「『辺野古』県民投票の会」の代表でシールズ琉球のメンバーだった大学院生の元山仁士郎氏(27)に近い関係者は語る。
「有権者の過半数の反対なんてことに元山氏もわれわれも拘っていませんよ。投票者の過半数が反対の意思を表示してくれればいい。“やっぱり沖縄は埋立てに反対なんだ”という印象が広く伝われば、4月の衆院補選(沖縄3区)、7月の参院選でもわれわれに有利な選挙が展開できる」
県民投票はたんなる政治的パフォーマンスだということか。
もちろん保守系政治家の多くは「反対多数」を懸念している。自民党沖縄県連に属する某市会議員はしきりにぼやく。
「県民投票で反対が多数となれば、それが相対的な数字であっても、衆院補選、参院選に影響が出ることは必至です。したがって、いかに反対票を減らすかが課題ですが、自民党県連はゴタゴタ続きでそうしたキャンペーンを張る余力がない。今回の県民投票をめぐっても県連内部はバラバラ、会長が辞任する騒ぎまで起きている。これでは選挙も勝ち目がない」
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