フィフィの主張「民主党が改正児童虐待防止法に反対した」は完全なフェイクなのか チェックしてみてわかった意外な事実

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 タレントのフィフィがツイッターに投稿した次の内容が「事実誤認」が含まれているとして、批判を浴び、謝罪、撤回に追い込まれた。問題になったのは以下のツイートだ。

「私は問いたい、なぜ平成16年の警察の積極的介入を盛り込んだ児童虐待防止法改正に反対した蓮舫議員が、今回の虐待死の件で現政権を責めることが出来るのか、私はその真意を問いたい。あなたは本当に国民の側に向いているのですか?それ以前に同じ親の立場として問いたい、なぜあの時反対したのですか?」(2月17日)

 たしかに、このツイートには間違いがいくつも含まれている。最大のものは、蓮舫議員についての言及で、児童虐待防止法改正時(平成16年4月)に、彼女は国会議員ではなかった。だからこんな風に責めるのはお門違いだ。

 また、この改正は超党派で合意したものであり、全会一致で採択されている。従って、そもそも「反対」した議員なんかいない、という指摘も各方面からなされている。これもその通りだ。

 しかし、では普段から社会問題に詳しいフィフィがどうしてそんな「間違い」を犯したのだろうか。それを解く鍵は「改正案」の成立過程を知る必要がある。
 元警察官僚で、現在は児童虐待・性犯罪をなくすためのNPO団体「シンクキッズ」の代表理事をつとめる弁護士の後藤啓二氏の著書『日本の治安』には、こんな一節がある。

「児童虐待が疑われる家庭への警察の立ち入りは児童虐待防止法の改正段階では検討されたことがあるが(2004年=平成16年)、『警察権力の濫用が懸念される』という理由で民主党などが反対し、結局、立ち入り権は児童相談所にしか認められなかった」

 つまり、蓮舫議員は関係ないのだが、当時、民主党が「警察の積極的介入」に反対した、それで警察の立ち入りが難しくなった、と指摘されているのだ。
 当時の経緯はこういうことになる。

 もともと、自民、公明両党が提案していた改正案では、児童相談所の立ち入りを親が拒否した場合には、「警察官の強制立ち入り」が可能だとしていた。一方で、民主党など野党側は、「警察権力の濫用」に懸念を示し、裁判所の令状などが必要だ、とした。簡単に言えば、警察が介入する際のハードルを高くする案を示したのだ。

 当時の朝日新聞にはこうある。

「与党案にあった子どもの『生命や身体に重大な危害が生じるおそれがある』時に現場の判断で警察が強制的に立ち入ることを可能にする条文については民主党の反対が強く、法案盛り込みは見送る方向となった」(2004年3月5日)

 こうした事前の話し合いの末、与野党が合意できる改正案が固められた。「全会一致」で成立したのは当然である。

 この改正案については、成立当初から問題点を指摘する声があった。読売新聞は、解説記事で警察の積極的関与の必要性を訴える声を紹介したうえで、「悲惨な事件は後を絶たず、児童虐待の防止には一刻の猶予も許されない。改正案はその十分な回答になっていない」(2004年3月16日)と厳しく批判していた。

 蓮舫議員への批判は的外れだったのだが、民主党が警察の積極的関与に反対した、という点は事実である。そして、警察が積極的関与をしていたら、野田市の小4女児虐待死事件などは防げたのでは、というのは前出の後藤弁護士も指摘しているところだ。

 だから次にツイートするならば、当時すでに幹部だった小沢一郎議員や菅直人議員、岡田克也議員あたりに「なぜ警察の強制的立ち入りに反対したのですか」と聞いてみるのが正解ということになるだろう。

デイリー新潮編集部

2019年2月20日掲載

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