死闘続く「ゴーン」vs.「日産・検察」連合 スパイ映画さながらの調査も“論破”
スパイ映画ばりの“おとり捜査”
それだけではない。専務執行役員は帰り際、「会社からの貸与だから、今後は(邸宅管理の仕事などに)これを使って」と、管理人にノートパソコンとスマホを渡したという。
ルノー関係者が話を進める。
「しかし、実はそれが罠だった。それから半年が経ち、ゴーンが逮捕されるほんの1時間半前、日産の社員がいきなり邸宅に踏み込んできました。かねてから特捜部と連携を取っていた日産は、逮捕日時まで耳打ちされていたというわけです。そして、ノートパソコンとスマホを没収し、そこに残されていたデータを押さえたのです」
絶対権力者だったゴーンが相手だけに、日産もスパイ映画さながらの調査方法を取るしかなかったのだろうが、これに管理人は精神的なショックを受けたという。
「ベイルートに加え、ブラジル・リオデジャネイロの邸宅でも、逮捕と同時に日産の社員が鍵を交換し、ゴーンの家族らが立ち入れないようにした。ただ、ブラジルではゴーンの長女が立ち入りを求める裁判を起こし、日産の敗訴が確定しています。ベイルートの管理人も“いきなり家から追い出されて他の場所に監禁され、パソコンやスマホのパスワードを教えるよう強要された”と地元警察に被害届と陳述書を提出しています」(同)
日産はいわばおとり捜査によって、管理人のパソコンから、ゴーンの妻がシャンデリアの修繕費用を日産に請求したとのメールを手に入れている。犯罪行為があるのなら、それも致し方あるまいと思うのだが、
「しかし、本当のところ、そのシャンデリアは、ゴーンの妻キャロルがパリの蚤の市で3千ユーロ(約38万円)で購入した中古品。検事もそれを承知の上で、取り調べでは6万5千ユーロの修繕メールについては何も聞かなかった。ですから、ゴーン本人も“あのシャンデリアが非難されるほどのものなのか?”と検事に問い返したそうです」(同)
ゴーンの言い分では、ベイルートで社宅が必要だったのは、第一に安全のためだった。
「ゴーンは、ルノー、日産、三菱の3社連合という世界的超大企業のCEOです。当然、家族も含めて誘拐などのリスクがある。ベイルートには、イスラエルと戦闘を続けている過激派組織ヒズボラが拠点を構えていて、日本とは治安のレベルが違います。もし、社宅ではなく、ホテルを利用するにしても、別途、ボディガードを雇わなくてはならないし、どのみち相当費用がかかるのです」(同)
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