内妻が「鳳蘭」に横領解雇され… 「火野正平」が明かした憤然たる胸の裡
鳳の取り巻き
とにもかくにも、当事者たちから詳しい事情を聴く一手である。しかし鳳は、
「それはもう終わっていることなので、お話ししたくありません」
と、頑なに説明を拒むし、鳳蘭事務所も、“元マネージャー”について、
「彼女とは鳳の宝塚時代からの付き合いで、信頼して任せていました。なぜこういうことになったのか不思議です。私的流用はまちがいありませんが、その一部は返金済み。すでに解決していることでもあり、大ごとにしたくないのです」
であれば、書面で解雇のお知らせを出さなくても、よかったのではないか。
次に内縁妻を訪ねたところ、火野が彼女の“盾”となって意外な事実を語りはじめたのだ。
「うちのかあちゃんは絶対に、横領なんて大それたことはしていない。俺は信じている。それに、なんで俺がかあちゃんのカネ、遣わなくちゃいけないの。俺、仕事しとるぞ、ちゃんと」
紫煙をくゆらせつつ、説明に入る。
「向こうが言っているのは、千数百万の私的流用ってこと。彼女は、俺に黙って千数百万のカネを必死にかき集めて向こうに渡したんだよ。一部じゃない。それで全額だ。俺は、“カネを渡したってことはお前、私的流用を認めたことになるんだよ”と言ったけど、かあちゃんは、“どうしようもなかった。もう忘れたいんだ”、と」
そして、憤然とした様子でこう切り出した。
「あのなあ、ぶっちゃけて言ってやろうか。そもそも、鳳さんの事務所は我が家の1階に入っていたんだけど、仕事の面だとかで色々あって、縮小しなくてはならなくなった。そんなとき、かあちゃんが鳳さんの取り巻きたちに呼ばれて、“あんたはこれだけ遣ってるだろ”と詰められたんだ。彼女は真っ白になって、ワケも分からないまま拇印を捺してしまったんだよ。そうなるよう仕向けた人物がいるってことだ」
事務所内で、鳳の“側近”の座をめぐる争いがあったと言いたいらしい。その結果、鳳のもっとも近くにいたマネージャー、つまり内縁妻が放り出されたということか。“そう仕向けた人物”を知っているはずの彼女は、
「私にとって鳳蘭は、いまでも誇りに思う大切な女優です。だからなにも話せません。むしろ私にも、どうしてこんなことになったのかが分からないぐらいなんです……」
これだけ言うと固く口を閉ざした――。
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