何書いても叩くネットの文化 文句つける人生を送っとけ(中川淳一郎)

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 ネットに何かを書いたら、「バカ」「つまらない」「小学校からやり直せ」みたいな辛辣な言葉を浴びせられた経験を持つ方もいるかもしれません。でも、あんまり気にしないでください。これはネットの「仕様」であり「文化」なのです! ネットという場所はどんなに良い話を書いても非難されるものなんです。この13年ほどネットに文章を出し続けてきた私など、何千回言われてきたことか。いまや、こうしたコメントがないと寂しくなるほどです。

 先日ネットで「これまでに出会った最も優秀な学生」について書きました。内容は、体育会ラグビー部の学生・A君の面接での受け答えや彼が話したエピソード等を絶賛するものでした。そのエピソードを伝えるとともに、面接官が実際に考えていることを伝え、学生の「清廉潔白なことを言わなくてはいけないのかな?」「サークルの副幹事長をやった経験を言わなくてはいけないのかな」みたいな思い込みをぶっ壊し、「ありのままのあなたでいい」と伝えることを意図していました。

 しかしながら、寄せられるコメントの30%ぐらいは「参考になりました!」や「就活生は読んだ方がいい」的なものですが、残りは私に対する罵倒と、文中に登場する「優秀な学生」への罵倒であり、サムネイルで使った集団面接の写真に登場するリクルートスーツの女子学生の太ももが素敵、みたいなコメントだらけです。

 というわけなので、その原稿に対する批判的な意見の数々を紹介します。

「結局旧来的な体育会偏重のクソ採用」「彼がその後どうなったかを書いていないから信憑性なし」「面接官が学生に感心している時点でこの程度の会社なので行く必要なし」「この学生が語っている話は創作だ!」

 また、面接官に対して「知識勝負」を仕掛けてくる学生は損をするといったことを書きました。私の場合は広告会社だったので、「学園祭で企業とタイアップしたカップラーメンを完売した」みたいなエピソードを武勇伝として聞かされることが多かったのですが、「そんなもんはこちらは何度も日常業務としてやってるから『すごいでしょ!』なんてやっても鼻白むだけ。無駄に『知識勝負』を仕掛けてくるんじゃねぇ」ということです。すると、「これまでの経験がその先に続く、という発想がないのかよ、このクソ老害」みたいな反論が来る。いや、私は、「いちいち面接官に対してマウント取ってるんじゃねーよ。それは嫌われるぞ」と面接で落ちやすい行動をしないように忠告しているだけなんですよね。

 しかも私が「どうぞお座りください」と言ったことについても「これはパワハラだ!」なんて反応まで出てくる! 私の経歴を知っている人からは「こいつは博報堂を4年でドロップアウトした程度のヤツ」なんてことも書かれます。もう、こうなったら絶対に叩かれないであろう文章を書くか。

「僕が飼っているネコのニャーちゃんはいつもかわいいの」

 いや、これでも無理だな。「犬が好きな人への配慮が足りないこんなクソ文章を書くライターは死ね」が来るね。まぁ、お前らはそうやって文句つける人生を一生送っとけ、だ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2019年2月7日号掲載

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