日本語強要騒動の大坂なおみ 「カワイイ」アスリート像を望むメディアのズレ
全豪オープンで日本人初優勝。あっという間に嵐の活動休止宣言に話題が移ってしまった感はあるが、大坂なおみの快挙には日本中が沸いた。相手の追い上げやメンタルコントロールに苦戦するような場面が見られたこともあり、感動もひとしおだった。
そしてコートの中の表情とはうって変わって、はにかんだ笑顔を見せながら優勝スピーチをした彼女に、また心を奪われた人も多いのではないだろうか。相手を讃え、大会関係者をねぎらい、自分のコーチやチームに感謝を伝えたコメントはスポーツマンシップそのものだった。
優勝後は様々な取材が彼女のもとに殺到していたが、中でも目を引いたのは「日本語でコメントをお願いします」とねだるメディアの存在がネットニュースになったことだ。アメリカを拠点とする彼女は、当然ながら英語の方が感情を伝えやすい言語であり、日本語での表現は不慣れである。それをわかっていてのオーダーだろうし、その裏にはニュースのタイトル映えする「なおみ節」の人気があったからと思われる。
「なおみ節」といっても何か決まったフレーズがあるわけではなく、彼女の屈託がなくユーモアのある話しぶりを指しているとのことだ。特に彼女が不慣れな日本語ではにかみながら言うと、カワイイ、という反応も増えるのだろう。しかも圧倒的な強さを持つアスリートなのに、というギャップも含めてかもしれない。でもそれって、ちょっとバカにした扱い方だなと思う。
気になった点は大きく2つある。、未熟さを押し付けていること、そしてそれを「カワイイ」アスリート像として固定しようとしていることである。
日本の「カワイイ」という感覚は、未熟なものを肯定する傾向が強い。2頭身のキャラクターしかり、10代のアイドルしかり、子猫や子犬しかり。今回のケースで言えば、「不完全な日本語を話す様子」が「カワイイ」とされたのだろう。しかししかし彼女はアニメキャラでもアイドルでもなく、アスリートである。日本語での回答を指示されたのは、対戦相手に関するコメントを求められた時のことだという。だとすれば不慣れな言語で回答を強要するのはいよいよもって不作法だ。真剣な回答を引き出すことより、自社のニュース映えするコメントを優先したようにとれるからである。
ニュースタイトルやテレビの“つかみ”となる選手像が必要だ。そんな暗黙の会社命令に記者たちは従ったのだとも察する。ちょっとリップサービスしてくれればいいし、損にはならないから、という軽い気持ちだったかもしれない。確かに選手にとっても人気が出て、スポンサーやファンが多くつくのに越したことはない。でも今や彼女は押しも押されもせぬ世界のトップアスリートだ。たどたどしい話し方の「カワイイ」キャラと固定されるのは、日本の中だけで求められる女性アスリート像のようでもあり、どうにもズレているように感じられてモヤモヤした。
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