カタール戦の敗因はバイタルエリアでのマーキングの混乱、「対応力、修正力」も発揮できず

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森保監督の掲げる「対応力、修正力」はゼロ

 カタールは1トップのアルモエズ・アリが前線に張るのではなく、バイタルエリアに下がってボールを受け、攻撃の起点になっていた。さらに左MFのアクラム・アフィフ、ボランチのアブデル・アジズ・ハテムらもバイタルエリア中央に侵入して日本DF陣を混乱させた。

 アルモエズ・アリがバイタルエリアに下がっても、マーク役の吉田麻也はマン・マークで彼につきまとうのではなく、自身が担当するエリアから動こうとしない。かといってボランチと明確なマークの受け渡しをしているわけでもない。このためアルモエズ・アリはフリーでボールを受けることができた。ここらあたりが、前線で張っていたイランFWサルダル・アズモンとの違いと言える。

 そしてアルモエズ・アリに柴崎岳や塩谷司らボランチが下がって対応すれば、今度は攻め上がってきたアブデル・アジズ・ハテムをフリーにしてしまう悪循環に陥っていた。

 こうして序盤のマーキングがはっきりしない間の前半27分、アクラム・アフィフのパスを受けたアブデル・アジズ・ハテムがフリーとなって狙い澄ましたシュートを決めた。日本守備陣が序盤に混乱している隙をカタールは見逃さず、チャンスを確実に決めてリードを広げる。そのしたたな試合巧者ぶりは、準決勝のUAE戦を再現しているようでもあった。

 今大会の森保ジャパンは、準決勝のイラン戦を除けば1点差のゲームをモノにしてしぶとく勝ち上がってきた。「抜かれてもハイエナのように」(長友佑都)食らいついて相手を自由にプレーさせなかった。

 そんなストロングポイント、森保監督が常々口にする「対応力、修正力」を、カタール戦では発揮できず、前半序盤で2失点。さらに守備の混乱は攻撃にも影響し、日本はチャンスらしいチャンスを作れず決定機はゼロ。酒井宏樹が何でもないパスを2度もトラップミスするなど、普段は考えられないプレーから自滅したのがカタール戦でもあった。

 記者会見の最後に森保監督は「守備でミスマッチが起きてしまったとしても、最後の部分でどう止めるか。押し込まれていたとしても守り切れるよう、細部の部分を詰めていきたい」と話して締めくくった。その作業は、3月のキリンチャレンジ杯でのコロンビア戦とボリビア戦でも引き続き行われることだろう。個人的には、CBには今大会で成長著しい冨安健洋と、昨年12月にトゥールーズ(フランス)へ移籍した昌子源のコンビを見たいと思っているし、同じく海外移籍を果たした中山雄太や板倉滉らも呼んで欲し若手選手だ。

 アジア王者への返り咲きには失敗したが、日本はまだアジアでトップクラスの実力を保持していることは証明できた。決勝はケガで出場できなかった遠藤航ら、UAEでの1ヶ月で戦術的理解度はもちろんメンタル面でも確かな成長を遂げた選手もいるはずだ。それが今大会の収穫と言ってもいいのではないだろうか。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班

2019年2月2日掲載

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