がんになった「がん専門医」の独白 自分を検査してみたら“白い影”が見つかって…
患者だったら医療訴訟
私はお酒が好きで、つい飲み過ぎることがあります。2年ほど前から脂肪肝が気になっており、どんな状態か調べていた。しかし、この日はふと気になって、膀胱も映してみたのです。
自覚症状があったわけではありません。毎年の定期健診の尿検査でも「異常なし」でした(註・膀胱がんは8割の患者で血尿が見られ、早期発見のカギになる)。
膀胱がんの「危険因子」として知られているのは、喫煙です。男性の膀胱がんの50%以上、女性でも30%程度は喫煙のために発生すると言われています。私はタバコを吸わないし、運動も毎日欠かさない。そもそも膀胱がんは比較的珍しいがんなので、まさか自分が罹患するとは思ってもいませんでした。原因を考えても、運が悪かったとしか言いようがありません。
ただ、気になっていたことはあったのです。一昨年(2017年)の6月に、やはり超音波エコーで自分の膀胱を診たことがあって、その際、内壁に小さな影を見付けていたのです。でも、魔が差したとでもいうのでしょうか、忙しさにかまけて放ったらかしにしていたのです。
これは医師としてはいけないことで、本来であれば、小さな影でもすぐに精密検査を受けるべきでした。もし、患者さんの膀胱に同じような影を見つけて見過ごしていたら医療訴訟になっていたかも知れません。
「そういえば、以前映っていた影はどうなっているのかな」
そう思い出して、ズボンをおろし下腹部にエコーを当ててみました。健康な膀胱は丸くツルンとしている。ところが、モニターに映っていたのは、白く不気味に盛り上がっている影でした。
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