がんになった「がん専門医」の独白 自分を検査してみたら“白い影”が見つかって…
がんになった「がん専門医」の独白――中川恵一(1/2)
いつもはがん患者を治療する側の医師が、がんになってしまった。冷静に対処しようとしても、やはりショックは隠せないものだ。ご存じ『がんの練習帳』(新潮社刊)の著者である中川恵一氏が、偶然、膀胱がんを見つけてから手術を終えるまでのがん体験記。
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「もしもし僕だけど……。がんになってしまったよ。膀胱がんだ」
そう話すと、私の動揺が伝わってしまったのでしょう。電話の向こうで妻が泣き出すのが分かりました。当然の話ですが、人は誰でもがんのリスクから逃れることはできません。しかし、夫にその“順番”が回って来たという現実は彼女にとってもショックだったのだと思います。
これまで、私はがんの専門医として患者さんの治療にあたる一方、がんに関する知識を広める活動も行ってきました。
「今は日本人の2人に1人が、がんになる時代。がんに罹ることも前提にした人生設計が必要です」
講演では、いつもそう話していますが、正直言って自分が当事者になった時のことはあまり考えていなかった。健康に気を付けているのだから、がんにならない人間だと心の隅で思っていたのかも知れません。
〈2009年から6年にわたって週刊新潮に連載された『がんの練習帳』の著者、中川恵一氏(58)は、厚労省のがん対策推進協議会委員や文科省の「がん教育」に関する委員も務めてきた。いわば、「がん予防」や「がん対策」のスポークスマンだ。その中川氏が、自分の身体にがんが巣食っていることを知ったのは、昨年の暮れだった〉
がんを見つけたのは12月9日のことでした。その日、私は知人の病院に手伝いに行っていたのですが、空いている時間に超音波エコーで、自分の肝臓を診ていたのです。健康診断で、お腹の周りをグリグリやる、あの機械です。
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