活動休止「嵐」のリーダーにしゃべりのプロが感動した瞬間
27日に発表されるや否や、ニュースでもトップ項目で扱われた「嵐」の活動休止。そのこと自体、彼らの存在の大きさを示すものだったが、会見での見事な応答ぶりもまた「国民的アイドル」とされる理由を示すものだったと言えるだろう。
「無責任という指摘もあるのでは?」といった、ちょっと挑発的な質問に対しても、堂々と落ち着いて答えて「嫌な感じ」を決して出さない。深刻になりそうな話題の時にも、ユーモアを交えて答える。凡百の経営者やら政治家よりもよほどきちんとした記者会見だったのである。
こうした彼らの見事さの背景の一つには、「観察力」がある、と論じていたのは、フリーアナウンサーの梶原しげるさんだ。「しゃべりのプロ」である梶原さんは、嵐ファンでもあり、かねてから彼らの対応力に注目していた。そして彼らは相手を観察したうえで発信する「観察コミュニケーション」に長けている、という点に気付いたのだという。梶原さんの著書『会話のきっかけ』から引用してみよう。
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そういえば、嵐のリーダー大野智さんの「観察コミュニケーション」に感動したことを思い出した。日本テレビの「24時間テレビ」でのことだ。この番組の司会も嵐。その1コーナーを嵐のリーダー大野さん自身が担当した。「被災地の空手少女が亡き母に誓う」という内容だった。
岩手県釜石市。東日本大震災の津波でお母さんを亡くした小学6年生、11歳の少女は、悲しみを乗り越えようと幼稚園から続けている空手の稽古に打ち込んでいる。小学生「型」の部門で岩手県大会を勝ち上がった彼女は全国大会に進出を決め、天国の母に優勝旗を見せようと懸命の練習を続けていた。
テレビは、少女の全国大会での戦いぶりを生中継するのだが、その事前取材に大野さんが釜石にでかけた様子をカメラに収めていた。なぜ大野さんがこのコーナーを担当したかと言えば、少女は「大野君」の大ファンだったからだ。
その憧れの大野さんが突然我が家にやって来た。「えい! やあ!」と足を蹴り上げ、こぶしを突き上げる道着姿の凛々しい空手少女は一瞬にして小学6年生の女の子に戻り「え? え? え?」と驚き戸惑っている。
「こんばんは! 練習中ごめんなさい。初めまして、大野です」
大野さんが握手しようと手を伸ばした。すると、少女は、道着で何度もごしごしと両の手のひらを拭き取る仕草を繰り返す。大好きな人に、練習で汗ばんだ手を差し出すことなどできないのが乙女心というものだろう。その様子を見て即座に反応した大野さん。
「あ、そうだ、僕も……」
大野さんは、少女以上に懸命に手のひらをズボンにこすりつけつづけるのだ。そこでようやく彼女に笑顔が見えた。そしてふたりの握手……。
私は感動した。大野さんの「観察コミュニケーション」と自然な反応に。
「君みたいな空手の名人と握手できるかと思うと、僕の手は緊張でびっしょり。迷惑かけるのは僕のほうだ」と言わんばかに、ごく自然にゴシゴシと手汗を拭ってみせた大野さん。「相手に気を使わせない」「恥をかかせない」という瞬時の配慮。あっぱれだ。
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決して通り一遍の対応ではなく、相手をきちんと見たうえで反応する。このあたりが「国民的」な支持を得てきた理由の一つなのだろう。