愛煙家に朗報? 「ニコチン」でアルツハイマーが防げる 脳細胞を“活性化”“保護”

ドクター新潮 健康 整体

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新薬に期待

 さらに愛煙家にとって寿(ことほ)ぐべきは、「ニコチンと脳機能」に注目しているのは米田氏らの研究グループだけではなく、先行研究も存在することだ。米田氏らが実験を行うきっかけとなった論文を発表した、京都大学の赤池昭紀名誉教授(薬品作用解析学)が説明する。

「ラットにおいては、脳虚血時に過剰に放出されたグルタミン酸が脳の神経細胞を死滅させることが明らかになっていました。そこで、高濃度のグルタミン酸に暴露したラットの培養神経細胞にニコチンを投与したところ、神経細胞死を抑制する現象が見出されました。すなわち、ニコチンが神経細胞に対して保護作用を発現することが分かったのです。たばこが健康にいいとは言えませんが、少なくとも脳のニコチン受容体に刺激作用があるという点において、喫煙行為が認知症やパーキンソン病に対してはプラスの方向に働いている可能性が高いと思います」

 ふたりの名誉教授が指摘するニコチンの脳細胞に対する「活性化」および「保護」機能。喫煙は緩やかな自殺行為とも非難されるなか、何はともあれアルツハイマーなどの認知症に関して言えば、非喫煙者より愛煙家のほうが「健康的」と言えるかもしれないのである。市川監督が晩年まで映画撮影という尋常ならざる知力を必要とする作業を続けられたのも、もしかしたら「1日100本」のおかげだったのかもしれない。

「ニコチンには末梢での副作用や依存の問題がありますが、脳のニコチン受容体を選択的に刺激する薬が新たに開発されれば、アルツハイマー病など神経変性疾患の予防・治療薬として期待できると思います」(赤池氏)

 ちなみに、ニコチンは健康野菜のイメージが強いトマトなどにも含まれている。

「たばこ=ニコチン=絶対悪」。そんな固定観念に囚(とら)われる前に、嫌煙家の皆さんがニコチンの効用に思いを馳せてみても罰(ばち)は当たるまい。まあまあ、そう目くじらを立てずに。何よりもストレスを溜めることこそ百害あって一利なし。「悪」の中に「良」があることを認めてもいいじゃないですか。大らかに、「ニコニコ」笑いながら――。

週刊新潮 2019年1月24日号掲載

特集「愛煙家の胸が晴れた 『ニコチン』でアルツハイマーが防げる!」より

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