量販店化するZOZOに「服好きな人間がいない」の声 ミキハウス離脱、しまむらまでも撤退匂わす

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ミキハウス社長語る

 オンワード離脱の引き金を引いたのは、担当者が「ブランド価値を毀損する危険性が高いと判断致しました」と語る「ZOZOARIGATO」なるサービスである。昨年12月25日に導入されたこの新サービスは、ユーザーが会費を払うことで、ZOZOでの買い物が常に10%引きになるというもの。割引分の負担はZOZOだが、ブランドからすれば、常にバーゲンセールが行われている格好となる。

 離脱が噂されていたミキハウスの木村皓一社長を大阪の自宅で直撃すると、

「1月7日の朝に担当者から報告があって、画像を見てこれはアカンなって。別に『ARIGATO』キャンペーン自体は何の問題もないと思うで。ただ、ウチとしてはブランド・イメージが下がるから、ああいうのには参加したくない。こんなセールが続くなら100%撤退や。そもそもウチは百貨店でもセールしない。商品はメイド・イン・ジャパンが多いから、価格競争になったら工場や小売りが苦しむことになる。日本の従業員を守らなアカンからバーゲンはせえへんのや」

 と、正式に離脱を認めるのだった。そして、ZOZOの立ち上げ初期から参加するライフスタイル系のブランド担当はこう明かす。

「ウチは早期参入なので手数料は30%未満でした。当然ですが、会社によって対応を変えているんじゃないですか。例えば『コート』とか特定のキーワードで検索すると、あるブランドの商品ばかりが上の方に表示される……なんてこともありますし。正直、他社に比べてZOZOの手数料は高い。原価率が高いところはやっていけません。それでもZOZOの集客力やノウハウを考えて“まぁ仕方ないか”と思って出店しているブランドがほとんど。でも1~2年やってみると手元に大した利益は入ってこないと分かる。自社ECを強化したほうがよっぽど見返りが大きい」

 ZOZOが配るクーポンの割引分はブランドが負担する。販売ツールとして強力だが、

「メールでしょっちゅう“やりませんか”と営業されます。多いブランドだと月に3回くらいやってる印象です。断ることも出来るけど“他ブランドはやってるから売り上げ落ちますよ”と言われちゃう。撤退話があるユナイテッドアローズ、ジュンなんかが抜けたら大きい打撃でしょうね。ZOZOにはブランドがお金を払って広告を掲出する枠があるんですが、ここを見ていても変化を感じます。以前は有名ブランドが正規の価格で商品を紹介していたのに、今はセールのお知らせとか、元々安価なブランドが出してばっかり。安さがZOZOの目玉になってるということです」(同)

 悪名高い新サービス「ZOZOARIGATO」を評して、

「メーカーにとっては何のメリットもない。ZOZOの株価が下がっていますけど、“ざまあみろ”と思ってる業界の人は多いんじゃないですか。さんざんメーカーの首をしめて私腹を肥やしていたわけですから。『1億円キャンペーン』も、搾取した金で何やってるんだよと不信感を持っている人が多い。業界内で、アンチ前澤の声はますます高まっているように感じています」(同)

 巨大プラットフォーマーと参加ブランドの関係は、中世の封建領主と農奴とのそれに似て、怨嗟の声があがるのもむべなるかな。

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