大河「いだてん」が早くもピンチ “近現代”と“オリジナル脚本”はコケるのジンクス

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わかっていたはずの低視聴率

 では、逆にこれまでの大河ドラマワーストを見てみよう。

 上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は感慨深げに言う。

「原作のないオリジナル脚本が、ワーストのほうに目立つのが気になります。NHKとしては、オリジナル脚本にすることで、ストーリーをいじれると思っているのだと思います。しかし、ガッチリした原作があってこそ、背骨がしっかりしているからこそ、遊びもできるんですけどね。だからこそ、大作家の原作の大河は面白く、人気もあったわけです。でも、やっぱり日本人は、戦国時代と幕末が好きなんですよ。日曜夜8時には、信長・秀吉・家康が出てくる戦国時代の面白いところ、本能寺の変があって、秀吉が天下を取って、その後、家康が幕府を開くという、心地よく刷り込まれた歴史物語なら、繰り返しでも見るんです。それを、手を変え品を変えて見せるのが大河です。一方で視聴者は、知らない時代の知らない人は見たくない。同じ戦国時代であっても、『おんな城主 直虎』は知らないし、平安時代も室町時代も興味がない。ましてや明治以降の話は、まだ評価が定まっていないところもありますからね。『西郷どん』だって幕末の頃は面白くても、征韓論や西南戦争など最後のほうは、いまだに評価が定まっていないところもあります。明治以降の人物は、遺族だって生きている場合がありますし、生々しさがある。そういった話なら、大河でなくてもいいんですよ。『山河燃ゆ』だって、ほかの枠で見たかったと思いましたしね」

 どうやら、大河にとって“オリジナル脚本”と“近現代”は鬼門のようだ。特に“近現代”については、すでに33年前に結論が出ていたのである。

“近代大河”を指揮したNHKの川口元会長は当時を振り返り、新聞のインタビューにこう答えていた。

〈時代劇は歴史のロマンを感じさせるかが、近現代はまだ生々しさが残る現実なんですね。でも、思い切って冒険をした意味はあったと思う。日曜夜の定時枠で求められているものは何か、改めて確認できたからです。現場が「時代劇に戻したい」とも意思出て、了承しました。〉(読売新聞:05年12月16日付)

 にもかかわらず、近現代大河「いだてん」をスタートさせて、この惨状である。前出の碓井教授は、それでも見続けるという。

「さすがにNHKだって、結果はなんとなくわかっていたと思いますよ。でも、来年の東京五輪という国策にも、お付き合いしないといけないのでしょう。ひょっとするとワースト大河の1位になるかもしれませんけど、それでも見ようと思うのは、たとえ失敗しても面白がらせてくれるのが、クドカンの作品だからです。でも、従来の大河ファンの方には、来年まで待ってもらうしかないかもしれませんね」

 来年の大河ドラマ「麒麟が来る」の主人公は、ご存知!明智光秀だ。クライマックスは「敵は本能寺にあり!」である。「いだてん」は見ないという方、今しばらくお待ちください。

週刊新潮WEB取材班

2019年1月20日掲載

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