「羽生無冠」で乱世になった将棋界 “コンピューター棋士”第3世代が台頭の是非
やはりこの人
その豊島2冠と並び、20代でタイトル保持者となっているのが、斎藤慎太郎・王座(25)と、高見泰地・叡王(25)の2人。
「斎藤王座はイケメン棋士として有名。コンピューター将棋に傾倒していて、やはり『電王戦』に出場し、見事勝利を収めた経験があります。高見叡王は、対局が忙しい中、立教大の文学部に5年間通い、一昨年に卒業した。すぐにトップ棋士の仲間入りを果たし、これからますます伸びる棋士だと思います」(観戦記者)
と期待は大、なのだが……。
「確かに彼らも強いですが、タイトルの過半数、つまり4〜5冠を獲得して初めて『覇者』と呼ばれる。その意味では、もっともその座に近いのは、藤井聡太七段だと思います」
と、やはりこの人の名を挙げるのは、前出・森下常務理事である。
「棋士の指し盛りは20代前半、ということを考えれば、現在16歳で、そこに向かってどんどん伸びていくのは、やっぱり彼をおいて他にはいないでしょう」
確かに、デビュー3年目の昨年も藤井七段は勝ちまくった。史上最年少で一般棋戦に優勝し、新人王戦でも優勝。最速での100勝を達成し、勝率は8割4分超と、これまたトップクラスの数字を残しているのである。
「藤井七段は、プロの間でも最強棋士の一人として認知されていまして……」
と、先の観戦記者は言う。
「最近ではこれまでの定跡になかった手を指されるケースが増えてきた。こうした“藤井シフト”が敷かれるようになったのは、本物の証明でしょう。この正月には、記念対局ですが、豊島2冠も下しています」
実際、今後の展望について渡辺棋王に聞くと、
「(現在の混戦状態が)今後どうなるかは藤井七段が台頭する時期にもよりますので、わからないですね」
また、佐藤名人も、
「拮抗の状況に劇的な変化をもたらすとしたら、それは藤井七段という可能性は十分にあります」
と、最強の敵の足音を十二分に感じているのが読み取れるのだ。
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