「慶應」法vs.「早稲田」政経・法 “就職事情”に見るそれぞれのカラー
慶應生の縦横のつながり
大学の“親心”は学生に伝わっているだろうか。
「1年次は必修が多く、導入教育では、20人ほどのクラスに先生が1人ついて論文の書き方を学びます。2年後期からゼミが始まって、ゼミごとにOBやOGとのつながりがあるので、就職活動にも役立ちました」
と、早大政経の18年の卒業生。同じ年に卒業した慶大法学部政治学科のOBは、
「1、2年の間も必修や教養科目が多く、意外に忙しいです。ただ、授業に出ずに試験対策プリントを手に入れて単位を取る、要領がいい人も多い。法律学科の学生のほうがマジメで、政治学科は、自分がなにを学びたいかわからない人が多い印象がありました」
最後に早大法学部の、現3年生の話。
「私が所属するゼミでは年に1回、慶應のゼミとの討論会があります。そのとき慶應の学生のほうが時間の使い方がうまく、余裕があるように感じます。逆に早稲田生は、討論会の前日に徹夜で準備するなど、瞬間的に出る馬力はすぐれているように思いますね」
では、彼らはどこに就職していくのか。両大学の就職状況をくらべると、
「慶應のほうが強い」
と言うのは人事コンサルタントの城繁幸氏だ。
「ここ十数年で早慶それぞれのカラーは薄まりましたが、それでも慶應が強い理由は、一つにはコミュニケーション能力が高い人が多いこと。二つ目は横のつながりが強いことです。就活情報を共有し、自分たちで模擬面接をするなど、質を高め合って勝負できる。一方、早稲田生は群れないからか、慶應にくらべて横のつながりを感じません」
『早稲田と慶應の研究』の著書があるライターのオバタカズユキ氏が、逸話を披露する。
「90年代の就職氷河期、早稲田を出ても第1志望にも第2志望にも入れないとき、慶應は就職に強かった。ゼミやサークル、体育会などで縦のつながりが強いからです。三田の学生は取材もしやすいけど、企業の広報のようでイマイチ本音を喋ってくれません。それくらい社交慣れしています。こういう話を早大生にすると“キモい”と言います」
もっとも、早大生にも強みはある。城氏が言う。
「一つは地道に泥臭い仕事を続けられること。もう一つは、裏方で力を発揮すること。それぞれが強い業界は、慶應は金融や商社。早稲田は銀行からメーカーまでオールラウンドで、あえて言えばマスコミです。入社後は、慶應出身者は上下で助け合うので出世しやすい。社員100人以上の会社にはたいてい三田会があって、早稲田に就職した大学職員で構成される早稲田三田会まであるほどです」
18年に最も多くが進んだ就職先は、早大政経が外資系コンサルティングのアクセンチュアで、法学部が東京都。一方、慶應法学部は法律学科が三菱UFJ銀行、政治学科は東京海上日動火災保険だった。これだけでもカラーが表れるが、結局は、どちらが自分に合うか。駿台の石原氏が言う。
「偏差値なんてプラスマイナス2くらいの間なら変わらない。それより自分を活かせる大学に行くのが一番で、合うかどうかは感覚が大事。私は受験生に、大学の学食に行って学生たちの会話を聞けば雰囲気がわかる、と話しています」
早慶は様変わりしつつも、カラーの違いは相変わらず鮮明だ。
(3)へつづく
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