「蓮池薫さん」が見透かした「横田めぐみさん」夫の悲しき嘘
羽田空港に着陸したチャーター機から降りる5人の男女。拉致被害者の帰還に日本中が感動したのは2002年(平成14年)10月15日のことだ。だが、その後は進展がなく、横田めぐみさんの動向も不明なまま。残された家族が齢を重ねていく中、蓮池薫さん(61)が語った。「拉致」のこれから、そして、めぐみさんの元夫がついた悲しき嘘――。
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現在は新潟産業大の准教授である蓮池さんに16年前を振り返ってもらうと、
「日本に向かう機内ではとても緊張し、機内食も喉を通りませんでした。何より、北に残してきた2人の子どものことが気になっていたからです。帰国の際、子どもを連れて行けず、それはつまり、必ず北朝鮮に戻ってこい、ということ。空港に降り立ってから派手な喜びを見せると、帰ってから影響があるかもしれない。だから、涙をぼろぼろ流すことはできなかったのです」
日本の熱狂とは裏腹に、複雑な胸中。しかし、帰国後、蓮池さんらは日本に留まることを決断する。
「当初、妻は猛反対しました。その決断ができたのは、政府の協力はもとより、拉致が国際的に注目されれば、北が子どもを返す、という見立てがあったからです」
その後、子どもたちは帰国したものの、他の拉致被害者は誰も戻ることができないでいる。それでも、18年は解決に向けて、希望の見えた年だった。
「6月に米朝首脳会談が行われ、拉致問題解決への良い流れになっています。ですが、会談以降、北の非核化に向けて、なかなか進まず、もう少し早く進展してほしい、というもどかしさも感じています。最近、アメリカは人道支援の可能性を示唆しつつ、北を非核化交渉に引き出そうとしています。国交正常化ありきの交渉は良くありませんが、日本も交渉に前向きな姿勢を発信し続けることが重要です」
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