急転直下の再逮捕 特捜部は「ゴーン」を特別背任で有罪にできるか

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 トータル80億円に上る役員報酬の過少申告に問われ、塀の中へと追いやられたカルロス・ゴーン(64)だが、3回目の逮捕は特別背任容疑である。

 司法記者が、その舞台裏を次のように語る。

「実は、特捜部は過少申告の金商法違反だけを立件して、手仕舞いにするつもりでした。ですが、ゴーンの勾留延長を12月20日に東京地裁に却下されて、事情が一変。地裁の判断が“金商法違反は形式犯なのに、ゴーンの身柄を長期間、拘束するのはおかしい”という世論の批判を後押しする形になったからです」

 メンツが丸つぶれになった特捜部は逮捕の方針が間違っていなかったことを世間に知らしめなければならなかった。そのため、地裁の勾留延長却下の翌日、実質犯である特別背任での再逮捕に急転直下、踏み切らざるを得なかったという。

「ゴーンは、二つの事案で特別背任に問われました。一つ目は、10年前にリーマンショックのあおりを受けて、新生銀行で運用していた金融派生商品の取引で18億円の損失が出て、それを日産に付け替えたこと。結局、その付け替えは証券取引等監視委員会から違法性を指摘された。二つ目は、ゴーンがそれを元に戻した際、信用保証に協力した知人であるサウジアラビアの資産家に、謝礼として日産子会社から16億円を支払ったことです」(同)

 金商法違反について争う姿勢のゴーンは、本件についても真っ向から特捜部の捜査を否定している。

「ゴーンを弁護する大鶴基成弁護士は“日産という大きな庇を一時的に借りたのは間違いないが、そのことは取締役会に諮って、きちんと手続きを踏んでいるし、損失も与えていないのだから問題はない”と反論しています。また、日産から資産家に謝礼を支払ったのではないかという疑惑についても“現地の子会社が抱えていたトラブルの解決を依頼したロビー活動費だった”と説明しています」(同)

 保釈されれば、ゴーンが自身の正当性について、同じような主張を記者会見でまくし立てるのは必至だ。

 一方で、東京地検特捜部元副部長の若狭勝弁護士は、

「有罪になる可能性は、高いと見ています。特捜部は損失の付け替えをした銀行の担当者から、背任行為を裏付ける証言を取っているとみて間違いありません。また日産の機密費から謝礼を支払っていた点についても、仮にサウジの知人に事情を聞けなくても、現地の子会社で働いていた担当者から供述を得られれば十分ではないでしょうか」

 と、特捜部の判断を力づよく後押しする。

 特別背任罪は最大10年の実刑だ。罪が認められれば、何度も年末年始を塀の中で過ごす憂き目を見る。

週刊新潮 2019年1月3・10日号掲載

特集「死闘になった『ゴーン』vs.『特捜部』7つの謎」より

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