殺人告白「前橋スナック乱射事件」組長は無罪 裁判長は“大岡裁き”か

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3人目の殺害告白

 そして、初公判は11月12日に開かれた。

 司法記者によれば、

「途端に、矢野は手のひらを返し、手紙の内容はまったくのデタラメだったと無罪を主張しました。だいたい、日医大も前橋の事件も自分は首謀者ではなく、“住吉会の上”からの指示だったと。ウソの告白で自分が再逮捕されれば、死刑判決を受けた二つの事件についても捜査が再開されるかもしれず、その結果、“住吉会の上”を逮捕して欲しかったと言い出したのです」

 それだけではない。あらたに3人目の殺害告白も始めたのだ。

 捜査関係者が明かす。

「前橋の事件では、実行犯の一人が一時、フィリピンに逃亡していました。その手配を行ったのが、別の組員だった。今夏、矢野はその組員を口封じのために殺したという内容の手紙を警視庁に送りつけてきました」

 実際、本誌にも矢野から〈(組員を)穴から出してやりたい一心です〉などと書かれた手紙が届いている。

「しかし、いずれも、死刑執行に怯える矢野の延命策に過ぎなかったわけです」

 と、司法記者が続ける。

「今回の判決で、裁判長は、矢野の告白を“死刑執行を引き延ばすための虚偽の疑いがある。殺人を犯したとは認定できない”と断じました。さらに、判決言い渡しの後、“あなたの告白によってご遺体が発見されたが、ご遺族を混乱させたことは遺憾に思う”“あなたからは控訴ができず、検察が控訴しなければ裁判は終わりです”などと窘(たしな)めた。司法を利用した命乞いを一刀両断にする“名裁き”と言えるのではないでしょうか」

 結局、検察は控訴しないと見られ、平成が終わる前に矢野は刑場の露と消えることになるかもしれない。

週刊新潮 2018年12月27日号掲載

ワイド特集「平成の『カネと女の事件』」より

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