「ルーシー・ブラックマンさん」殺人事件 刑事も目を覆った遺棄現場

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通称「ユージ」

 当時の捜査資料を繙(ひもと)くと、織原の存在は、早くも7月22日には浮上している。

 六本木のクラブ店長から、地域係の巡査にもたらされた情報だった。

 その巡査の報告書には、次のように記されている。

〈六本木管内で働く外国人ホステスに甘言をかけ現金を与える等して、ドライブ等に誘っては薬を飲ませていかがわしい写真を撮ってホステスをゆすり、犯行を重ねている男が居る。(略)通称「ユージ」と言う日本人で(略)外国人女性2人が同種の被害にあっているもので、(略)今回のルーシー事件に深く関与しているとの噂が流れている〉

 この「ユージ」こそ、織原だったのだ。

 捜査幹部が続ける。

「他にも、数人の容疑者が浮上しました。例えば、“外国人女性を隠れ家に監禁してSMプレーしたい”と話していた大手企業に勤めるSM愛好家。事情聴取をしたら、その後連絡が取れなくなったため、隠れ家を訪ねると、SMプレー中の 過失なのか、首吊り状態の死体で見つかった。さらに、オーストラリア人ホステスを拉致監禁してレイプする事件を起こした暴力団組員などもリストアップしました」

 しかし、捜査を進めるうち、織原の犯行に絞り込まれていったという。

「携帯電話の発信記録などから、ルーシーさんの失踪当日、逗子市内で一緒に行動していたことが判明。なおかつ、織原の周辺では、薬物などを飲まされた女性が強姦されるという事件が相次いでいることも明らかになったのです」(同)

 10月12日、ルーシーさんとは別のカナダ人女性に対する準強制猥褻容疑で逮捕。さらに、英国人女性、日本人女性などへの準婦女暴行容疑で再逮捕を重ねた。

「ルーシーさんの場合、遺体が見つからなかったため、捜査が難航しました。でも、その隠し場所は織原が三浦市に所有するリゾートマンションの周辺であることはわかっていた。スコップを持ち歩く不審な姿が目撃されていたからです」(同)

 遺体捜索チームは2カ月近く、ルーシーさんを探し続けたという。

「ようやく、01年2月9日、リゾートマンションから200メートル離れた洞窟で、古びたバスタブの下に埋められたルーシーさんの遺体を発見。バラバラにされたうえ、コンクリートで固められていた。鑑識の写真を見ると、すでに屍蝋化が進み、遺族のことを思うと目を覆うばかりの状態になってしまっていました」(同)

 結果、織原はルーシーさん含め2人の女性に対する準強姦致死、さらに8人への準強姦などの罪に問われた。一貫して無罪を主張し続けたが、10年12月、最高裁で無期懲役が確定。凶悪犯ばかりが収容される「長期刑務所」の塀の中で9回めの正月を迎えることになった。

週刊新潮 2018年12月27日号掲載

ワイド特集「平成の『カネと女と事件』」より

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