ショーン・ペンの小説は“出版への冒涜”!? アメリカでも続々登場「タレント作家」たち

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「酷評を通り越して“評するに値しない”とか、書評家からの“仕事として読まなければならなかったが苦痛だった”という声が散見されますね。有名人だから出版できた、本来であれば世に出せるレベルではない、“出版や物書きに対する冒涜だ”という意見が、作品を取り上げた複数の記事から読み取れました」

 と解説してくれるのは、北米在住ライターの関陽子氏である。

 簡単にあらすじを説明すると、主人公は人付き合いが苦手な元セールスマンの主人公「ボブ・ハニー」。彼は現在、政府のため暗殺業務も請け負っていて、ニューオリンズでハリケーン・カトリーナの被害者を助けるほか、バグダットやベイルート、南スーダンなど各地を転々としていく。そこにトランプ大統領や#MeToo運動など、時事的な要素も加わっているそうだ。こう聞けば、それほどマズそうな内容には思えないのだが、

「まず、ちゃんとした文章になっていない。言葉の選び方や使い方がめちゃくちゃで、『ザ・ガーディアン』にいわせれば、彼の書き方は〈私たちになじみのある現実をぶち壊し、文章作法や小説の構成をないがしろにし、意味さえなさない〉(3月27日付記事)。日本語でいえば、主語や述語も乱れているという感じです。“自己陶酔的”な著者が“野心に満ちた語彙”を駆使した結果、読み手にはさっぱり意味不明の何か=Stuff ができた。『これは本の形をした別の何か(Stuff)だ』と評する記事もありましたね。たとえばジェイムズ・ジョイスのように、難解で実験的な文章や高度な言葉遊びが、斬新な文学作品として高い評価を得ることもあるでしょう。でも、この作品の場合は単なる独りよがりだとしかみられていないようです」

 具体例として挙げれば、

〈She begins to writhe, cackle, and cough out her laughter uncontrollably. Her eyes watering, she nearly poos. Bob spies what might be a dime-sized and expanding moisture blossom from her rear-end-center, signifying perhaps some minimal ass-piss.〉

 という一文。詳しく訳すのもはばかれるのだが、要は笑い過ぎた「彼女」が“大”を漏らしそうになり、その様子を目にした主人公は、にじみ出る10セント玉ほどの“露”がひろがり“花のように咲く”ところを想像した――というシーンである。斬新といえば斬新だけれど……。

「3月29日付『ハフィントン・ポスト』はこれを踏まえ、『主よ、どうか我らをショーン・ペンの文才の“漏れ”からお救い下さい』と書いていました。詳しいセールスについては不明ですが、3月27日に発売されたこの本について、4月9日付『Showbiz411.com』には『5500部しか売れていない』との記述があります。もっともショーン・ペン本人がTV出演時や講演会で述べたところによると、“誰が何と言おうが気にしない”そう。むしろ批判をされたことで意欲が湧き、2作目の執筆を開始していると『Evening Standard』は4月の時点で書いています」

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