「NGフレーズ」リストで学ぶ パワハラ告発されないための「大人の怒り方」

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人格否定ではなく

 この点、

「叱るとは、人格否定ではなく、行動改善を求めること」

 と同様の指摘をするのは、表(2)の「やってはいけない叱り方 13のフレーズ」を考案した、ミュゼ代表で『部下がついてくる人、離れていく人の叱り方』の著者・齋藤直美氏である。

「意識や人格を変えることが目的ではなく、あくまで行動を変えること。部下の行動がどう変わるか、が基準なのです」

 そこから鑑みて、「叱る」には、以下の4つのステップで行う必要があるという。

(1)事実の確認をする。主観的な批判をしない。
(2)自らの感情を伝える。この際、「YOUメッセージ」ではなく、「Iメッセージ」を伝える。
(3)「望ましい行動」を伝える。抽象的に叱らない、具体的に叱る。
(4)相手にメリット、良い影響、感情をもたらす。

 齋藤氏が言う。

「例えば、挨拶ができない新人に対して、“声が小さい”“元気がない”と叱るのは、あくまで上司の主観です。新人からすれば、“小さくない”“元気はある”と思ってしまう。本人には本人なりの言い分があるので、納得が得られません。逆に“私の席まで声が聞こえていない”と指摘すれば、新人は何が悪かったのか、はっきりとわかります」

(2)については、前出・嶋田氏と類似する。「君は何度言っても……」と「YOU」を主語にして叱るのではなく、「期待している君がこんなことをして残念に思ったよ」などと、「I」、自分がどう思ったかを相手に伝えることが肝要だと言うのだ。

「次には、取るべき『望ましい行動』を伝える必要がある。この時、やってはいけないのが、抽象的な伝え方。“もうちょっとどうにかならないの”“頑張れよ”などという言葉では、上司と部下で考え方に差が出てきてしまう。具体的な行動のレベルで伝えることが大切です。そして、最後に行うのは、相手を不快な感情にさせないこと。人間は感情の生き物ですから、怒られたままだと、マイナスの気持ちで仕事に臨むことになります。“課題はあるけど、あなたの強みはこれだよ”などと、少しでも、相手を“頑張ろう”という前向きな気持ちにさせる必要がある。人間は最後に伝えられた情報が印象に残りやすいのです」

 7月18日、酒類メーカー「養命酒製造」が、「東京で働くビジネスパーソンの疲れの実態に関する調査」のアンケート結果を公表した。そこに「上司に言われて疲れが倍増したセリフ」のランキングがあるが、上位には、「常識でしょ/当たり前でしょ」「前にも言ったよね?」「そんなことも出来ないの?」「やる気あるの?」などが並ぶ。両氏の挙げる、やってはいけない「怒り方」のまさに典型例と重なるのだ。

週刊新潮 2018年8月30日号掲載

特集「『NGフレーズ』リスト付き! 『パワハラ告発』されない大人の『怒り方』」より

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