被害者や遺族に優しい法律を――家族3名を殺害された女性の悲痛な叫び “加害者天国”日本の現状
国民を守れなかった責任
確かに代執行制度のもとでは、加害者が払うべき金を国が肩代わりするわけだから「盗人に追い銭」的な側面を孕(はら)んでいると言えよう。しかし、
「国民は、安全で健康に暮らすために国家に税金を納めています。にも拘(かかわ)らず犯罪被害に遭ったということは、国が被害者の命、つまり生存権を守れなかったことになる。その責任を果たす意味で、国が賠償金を肩代わりするという論理は成立し得ると考えています。刑事訴訟における公訴時効の撤廃は、世論の後押しがあって成立しました。今、識者の間でも代執行制度の導入を検討する声が上がっており、世論の代執行制度に対するご理解は得られると考えています」(土田氏)
世田谷一家4人殺害事件にしても、前出の生井さんの事件にしても、「悪いヤツ」は野に放たれたままで、我々も「明日は我が身」であると言える。つまり、他人事とは言い切れないのだ。
「交通事故や災害には保険があっても、殺人事件には保険など存在しません。殺人事件の被害者遺族のダメージの大きさは計り知れないのに、サポートはほとんど何もない状態です。やはり、そろそろ国が何らかの手を打つべきです。代執行制度が実現してくれたら、どれだけ大きな支えとなるか分かりません」
こう切実に訴えるのは、1998年1月に起きた群馬一家3人殺害事件の被害者遺族の女性(41)だ。彼女は小暮洋史(49)にストーカー行為を働かれていた。そして、両親と祖母を殺害された。小暮は殺人容疑で指名手配されているが、今も逃げ通している。
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