被害者や遺族に優しい法律を――家族3名を殺害された女性の悲痛な叫び “加害者天国”日本の現状
今のままでは「殺され損」 被害者遺族が待ち望む「代執行制度」(2/2)
1990年に起きた札幌信金職員殺人事件によって、娘の宙恵(みちえ)さんを奪われた生井(なまい)澄子さん(82)は、逃走を続ける容疑者・長田(ながた)良二に対し、07年に損害賠償請求を起こした。事件が時効を迎えたが、せめて加害者に何らかの罰を与えたい、という思いからである。結果は勝訴。だが、判決から10年が経てば損害賠償請求権が消滅し、費用をかけて改めて訴え直さなければならない。
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「犯人らしい男がいるという情報があっても、私たち素人にどうやってその犯人を特定し、損害賠償させろと言うのか。結局、警察に任せない限り、遺族には何もできない。こうした状況のなかで、私は『代執行制度』が必要だと思うんです」(澄子さん)
本来は加害者が被害者や遺族に支払うべき賠償金を一旦国が肩代わりし、行政の責任で加害者から賠償金を取り立てる代執行制度の導入が議論されているのだ。
殺人事件の被害者遺族会「宙(そら)の会」の特別参与で、世田谷一家4人殺害事件の捜査にもあたった元警視庁成城署長の土田猛氏は、一般人である遺族ではなく行政機関を使える国が求償権を持つこと、そしてたとえ刑務所に入っても加害者に取り立てを追えることによる犯罪抑止力などを、制度のメリットとして挙げる。
これに対し、「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」の事務局長である高橋正人弁護士は、
「加害者の更生を期してとか、加害者の将来を壊さないためにとかよく言われますが、そもそも亡くなった犯罪被害者の将来には何もないんです。自分の大切な人を殺された悲しさは、どんなことがあっても癒えるものではないし、許せるものでもない。少年犯罪でも実名報道すべき、死刑にせよという意見は当然のものなのではないでしょうか」
と、「加害者天国」である日本の現状を嘆きつつも、
「私は犯罪被害者給付金制度を充実させるべきだと考えます。現状ではこの制度が非常に手薄で、支給額は、交通事故の自賠責保険にも遥かに満たない状態です。これでは被害者の経済的困窮を救うことは難しい。したがって、国の固有の補償責任としてこの制度を拡充すべきだと思います。一方、国が加害者の賠償金を立替払いするという建て付けでは、なぜ、殺人犯の賠償金の支払いに私たちの税金が使われなければならないのか――そうした感情を抱く国民も中にはおられるのではないでしょうか」
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