「びっくりドンキー」50周年 ハンバーグの一枚看板で愛され続ける“2つの理由”

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リサイクルにも注力

 庄司氏は1943年に岩手県金田一村(現・二戸市)で出生。高校を卒業して東京の木工所に勤務するが、わずか1か月で退職。ジャズドラマーを目指し、白木秀雄(1933~1972)に弟子入りする。

 ところが、家庭の事情などから岩手に帰郷。68年に盛岡市に飲食店を開店するが、それが「ベル」だった。当時の盛岡市では、まだ珍しかったハンバーガーを看板メニューに据え、地元客の支持を得る。

 ところが71年、庄司氏はマクドナルドが日本に進出するとの噂を耳にする。そこで店舗を視察するためにハワイに飛ぶと、「マクドナルドには敵わない」と痛感。帰国してからは、ハンバーガーではなくハンバーグを定食として提供するよう方針を転換させる。

 結果、今も続く、一皿にハンバーグとライス、サラダを盛り付け、みそ汁と箸で食べるというスタイルを確立したわけだ。

 庄司氏は81年、札幌市に拠点を移動。83年に大阪と愛知にびっくりドンキーのフランチャイズの2店舗を開店させたことから、チェーン展開を開始して現在に至る。

 公式サイトを見ると、「環境」を経営方針の最上位に位置づけていることが伝わってくる。牛肉は穀物飼料を与えていない「草」だけを食べたナチュラルビーフにこだわり、ハンバーグディッシュで提供される木製の皿は、タイのゴム農園で役目を終えた老廃木や北海道産シラカバの間伐材が原料。他にも生ゴミや廃油のリサイクルにも注力していることがPRされている。

「ほぼ全国にチェーン展開をしていますが、商品のラインナップには職人気質、クラフトマンシップを感じることがあります。メニューも木で作られた重いものです。意表を突かれるという面白さもあり、『遊び心を持ちつつ、堅実な経営』という社風を象徴するものと捉えることができると思います」(同・千葉氏)

 ハンバーグとライスの“相乗効果”を味わい尽くすのが基本の魅力だが、例えば唯一のアルコールメニューであるビールは北海道・小樽の自社醸造所で作られているというこだわりだ。しかも、ドイツ産の有機麦芽とアロマホップだけを使用しているのだという。

 チェーン店でありながら「手作り=家庭の味わい」を重視している。だからこそ千葉氏は「体にストンと落ちる美味しさ」と評価する。

 それにしても、全国規模のチェーン店で、しっかりとコンフォート・フードを消費者に提供する苦労は並大抵のものではないだろう。

 ほっこりとした味が人気を呼ぶのは当然だが、“お母さんの味”を職人気質が支えているというのが面白い。母性とプロ意識――矛盾するような2つの理由が相乗効果を発揮しているからこそ、びっくりドンキーにファンが多いのだろう。

週刊新潮WEB取材班

2018年12月27日掲載

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