「びっくりドンキー」50周年 ハンバーグの一枚看板で愛され続ける“2つの理由”
初代・庄司昭夫社長の先見性
1968年12月、「ハンバーガーとサラダの店・ベル」が盛岡市に開店。13坪の広さだったという。爾来50年、ベルは「株式会社アレフ」に発展。北海道札幌市に本社を構え、社員692人、運営する「びっくりドンキー」は300店舗を突破した。
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今年12月、びっくりドンキーは創業50周年を迎えた。テレビCMで記念の年だと知った方も多いだろう。公式サイトによると、鳥取、島根、徳島の3県には未進出。「全国チェーン」とは形容できないが、顧客の評価は極めて高い。
6月27日に発表された「18年度JCSI(日本版顧客満足度指数)第1回調査結果発表」(公益財団法日本生産性本部 サービス産業生産性協議会調べ)によると、飲食店の満足度は木曽路とリンガーハットが同点1位(77.0)となり、びっくりドンキーは3位(76.2)に続いた。
ステーキもファンが多いが、看板メニューはハンバーグ。店ごとに値段や内装が違うのも特徴だ。ハンバーグにライス、サラダが1皿に載った「レギュラーバーグディッシュ」は、東京・新宿靖国通り店だと150グラムが775円(税込)。本社のある札幌市の大通地下店では670円(税込)となっている。
フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は、「ハンバーグというシンプルな商品で50年愛されるというのは、並大抵のことではありません」と指摘する。
「アメリカには『コンフォート・フード』という言い方があって、『ほっこりする・心が安らぐ料理』のことを指しています。この背景にあるのは『お母さんの手作り料理』です。びっくりドンキーの料理は当初からまさにそれで、ハンバーグは家庭的な優しさと外食の楽しさを感じさせる絶妙の味つけで、長年、品質の向上に注力してきたことが伺えます」
“母性の象徴”とでも言うのが、箸で食べるというスタイルと、みそ汁を重要なメニューとして位置づけていることだという。
公式サイトには、みそ汁を紹介する専門のコーナーが設けられ、こだわりが語られている。煮干しなどで出汁を取り、野菜や海藻が自慢の具は日替わり。長時間の保温は香りが飛んでしまうため、各店舗でこまめに調理する――。
初代社長の庄司昭夫氏は2011年に68歳で死去したが、かつて千葉氏は、複数回、インタビューを行ったという。
「初めてお目にかかったのは25年ほど前のことで、当時、チェーンレストランは転換期にあり、チェーンレストランを支える“統一化”や“標準化”という言葉とは別の言葉が必要とされてきていました。その当時にあって庄司社長の場合、“地球環境”や“ガイア”という言葉が頻出し、面くらったことを覚えています。今となっては、庄司社長が『持続可能性を見据えた経営』を説いておられたと理解できるわけですが、並外れた先見性ではないでしょうか」(同・千葉氏)
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