新幹線でたこ焼きも豚まんも食べられない!? 「不寛容」な「ギスギス社会ニッポン」

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思わぬ反響が…

 そこで今年3月13日、連載しているネットメディア「ITmedia ビジネスオンライン」のなかで、「『551蓬莱の豚まん』が新幹線で食べられなくなる日」という記事を書かせてもらった。日本の鉄道史を振り返れば、車内は「食事の場」であり、豚まん同様に匂いの強い「たこ焼き」が車内販売されていた過去もある。しかし、現在は隣の人の食事の匂いが不快だという意見から、新大阪駅新幹線改札内にある「たこ家道頓堀くくる」の容器には「新幹線車内で食べるのはご遠慮ください」という内容のシールが貼られている。このような息苦しいムードが進行していけば、「551豚まん」が車内で禁止になる日も近いのではないか。そんな私なりの皮肉を込めたこの記事は、おかげ様で多くの方たちに読んでいただくことができた。

 だが、一方で反響の大きさのゆえ、意図していなかった事態が起きてしまう。記事をアップした3日後、「スッキリ」(日本テレビ系)で「あなたはどっち派⁉ スッキリJUDGE 豚まんを新幹線の車内で食べる あり? なし?」と視聴者によるリモコン投票がおこなわれたことを皮切りに、「ビビット」(TBS系)など様々な情報番組で、「新幹線車内の豚まん」の是非を問う「論争」が放送されることとなったのである。

 テレビの影響力の大きさは今更、説明の必要はないだろう。ネット上でおこなわれていた「局地的論争」が一気に全国区になれば、当然これまで以上に激しい罵り合いが始まる。「豚まんくらいで大騒ぎするなんて人間が小さすぎる」「周囲に気配りができないなんて社会人失格だ」――。つまり、考えの異なる者同士が互いの不寛容さを批判し合うという、救いのない泥仕合を招いてしまったのである。

 先ほども申し上げたように、筆者としては「ちょっとギスギスしすぎていませんか」と問題提起をしたかっただけだが、結果として「豚まん論争」を煽って、ギスギスした世論をつくりだしてしまった。この苦い実体験から、世の中の他のギスギスしたトラブルも多かれ少なかれ似たような構造だと気づくことができたのだ。

(2)へつづく

窪田順生(くぼた・まさき)
ノンフィクション・ライター。1974年生まれ。雑誌記者、新聞記者を経てフリーランスに。事件をはじめ現代世相を幅広く取材。『「愛国」という名の亡国論』(さくら舎)等の著書がある。

週刊新潮 2018年11月1日号掲載

特別読物「新幹線で『たこ焼き』も『豚まん』も食べられない!? 『不寛容』な『ギスギス社会ニッポン』――窪田順生(ノンフィクション・ライター)」より

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