深呼吸が健康にプラスになるとは限らない!? 専門家が説く「良い呼吸」「悪い呼吸」

ドクター新潮 健康 運動

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二酸化炭素は調整役

 まず(A)について。温暖化の原因とされ、身体から排出するというイメージが強いせいか、忌避すべきものと捉えられがちな二酸化炭素。実は、体内の「酸性/アルカリ性」バランスを保つ調整役を担っています。

 人間には身体の状態を一定に保ち続けるシステム(=ホメオスタシス)が備わっていて、わけても重要なのが、「酸性/アルカリ性」の微調整です。体内は二酸化炭素がたまると酸性に、逆に少ないとアルカリ性に傾くようになっており、pHで言うと7・4の弱アルカリ性(7・0が中性)をキープするのが正常。そこから酸性・アルカリ性どちらに振れても、不調や病気などが起きやすい。例えば、アルカリ性に偏ると発生しがちなトラブルのひとつに、過換気症候群があります。二酸化炭素の不足によって引き起こされ、息苦しさ、めまい、頭痛などの症状が出ます。その対処法として、「ビニール袋などに自分の息を吐き、その息を再び吸うようにすると良い」とかつて言われたのも、自分の息から二酸化炭素を摂取し、酸性とアルカリ性のバランスを正常に戻す効果があるからです。

 このことが(B)に繋がります。もちろん深呼吸は、気分転換や心身のリラックスのために役立ちますが、実は健康にとってマイナスになるケースもあります。意識的に深呼吸を行ない続けていると、「二酸化炭素の調節システム」が乱れて働かなくなってしまうからです。呼吸にはそもそも、意識して行なう「随意呼吸」と無意識に行なわれる「代謝性呼吸」とがあります。

 前者はヨガの呼吸など、いちいち考えて行なうものを、後者は意識しなくても勝手に行なわれている普段通りのものを指します。

 問題は、二酸化炭素の調節システムが、「無意識に行なっている呼吸のときだけ作動する」という点です。従って、深呼吸のような随意呼吸をずっと続けていると、せっかくの調節システムが機能せず、かえって体内バランスを崩すことになってしまうわけです。

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