市川笑也は生まれるか 歌舞伎「研修生」の試験と試練

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 街を歩いていると、こんなポスターが目に留まった。

〈歌舞伎研修生募集〉

 一般から歌舞伎役者を募るというのだ。それによると、役者のほか音楽を受け持つ「竹本」「鳴物」「長唄」の研修生も併せて募集しているという。一般に歌舞伎といえば、市川海老蔵や中村勘九郎のように、世襲のイメージがあるが、人材を外から受け入れる歴史は結構古い。有名な俳優では、女形の市川笑也や会計ソフト「勘定奉行」のCMでもお馴染みの中村京蔵も研修生出身だ。

 そこで、募集を担当する国立劇場(日本芸術文化振興会)に聞いてみると、

「歌舞伎俳優の研修生に関しては今回で第24期(24回目)の募集になりますが、研修生制度そのものは、50年近い歴史があります。現在、活躍している俳優のうち約3分の1が研修生出身ですから、言うなれば、研修生制度が歌舞伎界を支えてきたと言っても過言ではありません」(養成課)

 応募資格は中学校卒業以上から23歳以下の男子。選考は作文や面接など。舞踊や役者の経験は問われない。もちろん、試験には現役の歌舞伎役者が臨席する。

 もっとも、受かっただけで歌舞伎役者になれるわけではない。午前10時から午後6時までみっちり授業を受け、最初の8カ月で適性がないと判断されるとそのまま“退場”となる。

 演劇評論家の児玉竜一氏が言う。

「研修は歌舞伎の演技だけでなく茶道や華道といった芸道も学びます。プロになる覚悟を持ってもらうために昔は“君たちの基本的人権は無視します”なんて言ってから授業を始めたこともあったとか。2年で俳優を育てるのですから、稽古が厳しいのは当然です」

 晴れて研修を終えると、伝統歌舞伎保存会の斡旋で歌舞伎の一門に入り、新人俳優としてスタートを切ることになる。

 募集の締め切りは12月27日。まだ見ぬ歌舞伎界のスターはもう願書を出し終えているだろうか。

週刊新潮 2018年12月20日号掲載

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