ゴーン事件第二幕 “本丸”特別背任での立件は困難? 私的流用に“盗人にも三分の理”の反論
「ゴーン事件」の第二幕が上がった。
東京地検特捜部は11月19日、金融商品取引法違反で、日産自動車のカルロス・ゴーン会長を逮捕。2010年度から5年間に約100億円の報酬があったのに、有価証券報告書には半分の約50億円しかなかったと過少に記載した罪に問われたのである。その勾留満期を迎えた12月10日、ゴーンは再逮捕された。
今度は、現在に至るまでの直近3年間でも、同じように約30億円を誤魔化していた容疑である。
司法担当記者によれば、
「ゴーンは退任後に、日産からコンサルタント料や競合他社へ再就職しないための契約料名目などで年10億円ずつ、トータル80億円を受け取ろうとしました。金商法では、将来の報酬であっても受け取り額が確定した段階で開示しなければならない。そのために逮捕されたわけですが、ゴーンは80億円について、“受け取ることは未確定だから記載義務はない”と否認を続けているのです」
そこで、捜査の焦点となっているのが、「エンプロイー・アグリーメント」(雇用契約書)なる文書である。
「退任後の報酬の裏付けとなる、この文書の存在は、ゴーンとともに逮捕されたケリー前代表らほんの一部の側近以外には極秘でした。管理を担当していたのは、長らく秘書室長を務め、2年前に三菱自動車に移った大沼敏明理事だった。特捜部の捜査が開始されると、大沼理事は司法取引に応じ、その文書を提出したのです。しかも、“将来の支払いは確定していた”との証言も行ったと言われています」(同)
となれば、いわば「80億円弁護団」相手に、検察はゴーンの有罪を勝ち取れるのか。
「有罪にするためには、二つのハードルがあります」
と解説するのは、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士である。
「一つ目は、将来に報酬を貰う時期と金額が明らかであること。二つ目は、それが金商法上、記載しないと処罰対象となる“重要な事項”に該当することです。弁護側は裁判になれば、たとえ極秘文書にサインしていても、役員会の承認も経ていないのだから退任後の報酬は未確定で“重要事項”にはあたらないなどと反論してくるはずです。私の見立てでは、ゴーン前会長が有罪になる確率は6~7割といったところではないでしょうか」
決して、検察有利というわけではないのである。
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