「いきなり!ステーキ」が全国展開完了も、“もう成長は頭打ち”と言われる理由
既存店が不振
「いきなり!ステーキ」が拡大路線を邁進している。11月30日には秋田市に363店舗目を出店し、全都道府県への展開を成し遂げた。しかし、過度な“膨張政策”に警鐘を鳴らす声もある。
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まずは地元紙の報道をご覧いただこう。秋田魁新報が12月1日に掲載した「『いきなり!ステーキ』 本県1号店オープン 秋田市、開店前から行列」の記事だ。
〈ペッパーフードサービス(東京)は30日、秋田市東通にステーキ店チェーン「いきなり!ステーキ」の県内第1号店となる秋田東通店をオープンした。都道府県では本県が最後となった。午前11時の開店前から行列ができ、一時は60人余りが並んだ〉
秋田県民の喜びが伝わってくるわけだが、これは全国的に見られた”慶事”だったようだ。
ヤフーは12月5日、「Yahoo!検索大賞2018」を発表、6地域で「いきなりステーキ」というワードがトップを獲得した。それだけ、全国で「いきなり!ステーキ」の出店を歓迎する人が多かったということなのだろう。
それにしても、363店舗とは、どれくらい規模なのだろうか。「マクドナルド」の約3000店舗は別格として、近似値を探すとラーメンの「日高屋」が「首都圏で400店舗以上」という数字を広報している。
もう1ランク上がると、「くら寿司」の429店、「スシロー」の513店。2倍の700店に成長すると、812店の「コメダ珈琲」の背中が見えてくる。
果たして、「いきなり!ステーキ」の適正な出店規模は、どれくらいなのかという疑問が浮かぶわけだが、あと1点、重要なニュースを見ておこう。
運営元のペッパーフードサービスは10月、アメリカのナスダック市場に株式を上場した。日本の飲食チェーン店としては初という。まさに快進撃という印象だ。
ここでグラフをご覧いただきたい。ペッパーフードサービスが発表している「いきなり!ステーキ」の月次報告と、同社の株価を組みあわせたものだ。
折れ線グラフのうち、青は「いきなり!ステーキ」全店の売上、オレンジは新規開店から15か月を経た「既存店」の売上、そしてグレーが株価となる。
グラフで顕著なのは、今年3月を境として店舗の売上が全店でも既存店でも下落していることだ。追随するように株価も5月から落ちこみをみせた。ちなみに株価は、12月4日現在、4155円(終値)。年初来の最高値は4月10日の7180円、最安値は10月26日の2891円となっている。
株価急落を分析したのは、株式新聞が掲載した「ペッパー、売られる――5月既存店売上が大幅」(6月18日付)という記事だ。
《「いきなり!ステーキ」の5月度実績において、既存店売上高が前年同月比9.8%減と低迷したことが悪材料視された。客数の減少(同9.0%減)が響いており、4月度の既存店売上(同1.7%減)から大幅に落ち込んだ。別業態の「ペッパーランチ」も既存店売上が減少に転じている。
同社は今12月期に、連結営業利益40.3億円(前期比75.5%増)を計画している。「いきなり!ステーキ」で200店の新規出店(前期は71店)を目指しており、全店売上高では5月度は倍増したものの、既存店売上の減少傾向が続くようであれば、業績下ブレ懸念が高まる可能性もある》
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