10月逝去「江波杏子さん」“声”の遺作が今夜放送 上野介の妻演じる
収録は、亡くなるわずか5日前のことだった。
10月27日、肺気腫で逝去した江波杏子さん(享年76)の“声”の遺作、ラジオドラマ「罵詈雑言(ばりぞうごん)忠臣蔵」が12月8日夜10時からNHK FMで放送される。
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江波さんが演じるのは、吉良上野介の妻、主役の富子。米沢藩主・上杉綱勝の妹で、実在の人物である。
舞台は夫を討たれた後の吉良邸。富子たちは夜ごとやってくる“便乗討入り”の暴徒たちに悩まされていた。はじめの内は彼らの罵詈雑言に耐えていた富子だったが、ついにはキレて……。忠臣蔵をモチーフに今日のヘイトムーブメントを風刺した痛快時代劇だ。共演には尾美としのり、岡本富士太などが名を連ねる。
「富子は強い女のイメージでなければならない、声だけでそれを表せるのは江波さんしかいないと、企画段階から脚本の池谷雅夫さんと意見が一致し、たってのオファーをしました」
とは、演出を担当した真銅(しんどう)健嗣さん。
江波さんの事務所関係者が、その時の様子を語る。
「オファーを受けたのは9月頃のことでした。江波も意気に感じ、役作りにずいぶん力を入れていましたね。朗読劇は初めての経験。私たち事務所スタッフを相手に、とにかく納得がいくまで何度も繰り返し読み合わせをするんですよ」
満を持して臨んだ収録当日、江波さんは堂々の“声の演技”を披露した。
「吉良邸に詰めかけた暴徒相手に『騒ぐでない!』と一喝するセリフがあるんですが、江波さんならではの腹の据わった低い声で決めてくれました。言葉一つにも拘りを持つ、さすが大女優と感じました。まさかこんなに急に逝ってしまうなんて……」(真銅さん)
“女賭博師”の面影が甦る。