肉は焼くより茹でるべし、魚は生で… 「老化の元凶」を退治する食事術
糖尿病の権威が提言「100歳時代の食卓」(2/2)
細胞が老朽化する酸化が体の“サビ”であるならば、糖化は体の“コゲ”――。糖尿病の専門医であるAGE牧田クリニックの牧田善二院長は、糖化によって生成される100種類以上の構造物「AGE」が老化の元凶であると説く。その詳しいメカニズムについては前回に譲るが、骨にAGEが溜れば骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のリスクが高まり、また糖尿病患者の代表的な合併症が腎症であるのも、腎臓がAGEの影響を受けやすい部位であるためだという。
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AGEはタンパク質や脂質がブドウ糖と結合してできるが、われわれの体は水以外は、ほとんどタンパク質と脂質。糖質を摂りすぎてブドウ糖が余れば、どうなるか明白だ。だが、牧田院長によれば、これは体内で生成されるだけでなく、
「食品にも含まれ、食事を通して体に取り込んでしまうことが多い。また調理法によっても、AGEの摂取量はかなり変わります」
飽和脂肪酸を多く含む牛肉や豚肉をいくら食べても、肥満や生活習慣病に直結しない――と牧田院長は訴えるが、条件があるという。
「実は、最も危険なのが高温で調理することです。温度は揚げると170~200度、オーブンや窯で焼くと300度にも達しますが、するとAGEが急激に増える。AGEの含有量は“KU(キロユニット)”という単位で表しますが、たとえば、皮なしの鶏むね肉を例に挙げると、生だと692KU、1時間茹でると1123KU、電子レンジで5分加熱すると1524KU、オーブンで45分焼くと6639KU、そして8分揚げると6651KUになります」
残念ながら、肉を高温に直接さらす炭火焼もAGEが多くなり、さらにコゲはAGEそのものだとか。牧田院長によれば、1日のAGE摂取量は、7千~1万KU程度を上限にしたほうがいいという。
「AGEはコゲだと話しました。実際、AGEは茶褐色なので、概して茶色っぽい食べものは糖化が進んでいるといえます。たとえば、パンケーキのAGE含有量はざっと2300KU、ぶりの照り焼きが5千KU、焼き鳥も5千KU、ピッツァ6800KU、鶏のから揚げが7400KU、とんかつ7600KU。焼いたフランクフルト・ソーセージは1万KUを超えてしまいます」
食材として見れば、
「鶏肉はAGEの生成を防ぐビタミンB6が豊富で、抗糖化作用があるカルノシンも含まれる。また、豚肉は老化防止に高い効果があるビタミンB1がどの食品より豊富で、牛肉にはビタミンB1以上にAGEを抑制するビタミンB6が多い。みなすぐれています。しかし、肉にかぎらずどんな食材も、加熱する温度が高く、加熱時間が長いと、AGEが増える。だから、魚など生で食べられるものはなるべく生で食べて、加熱が必要であれば、低い温度でサッという程度にとどめたほうがいいのです」
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