ひょっこりはん、アンゴラ村長を生んだ「早稲田大学お笑い工房LUDO」って何?
勉強とアルバイトと、漫才
大学の「お笑いサークル」が注目を集めている。テレビでOBが活躍することも増え、入部者数は右肩上がり。芸能界も才能の“青田刈り”を狙ってライブを支援する。
***
速報羽生結弦との「105日離婚」から1年 元妻・末延麻裕子さんが胸中を告白 「大きな心を持って進んでいきたい」
プロの輩出や部員の多さから“名門”の1つとされるのが「早稲田大学お笑い工房LUDO」。その部員2人にインタビューを依頼、快諾を得た。
撮影した写真をご覧いただくなら、右側の男性が「前幹事長」の赤堀仁紀さん(21)、左側の女性が「前スタッフ長」の眞鍋萌さん(21)となる。
LUDOは、他大生でも入部可能な「インカレ」のサークルだが、2人は早大生。赤堀さんは先進理工学部、眞鍋さんは教育学部で学び、共に3年生だ。
幹事長としてサークルを引っ張った赤堀さんは、プロを目指して入部。漫才とコントのグループを今も掛け持ちしている。このように舞台に立つ部員を「演者」と呼ぶ。
一方、「スタッフ」の眞鍋さんは舞台には立たない。サークルの運営、ライブや大会の準備など縁の下の力持ちに徹し、スタッフ長になると「裏方のトップ」としてサークルを束ねた。
2人に「前」が付くのは、11月上旬に後輩の2年生へ役職を引き継いだからだ。これは就職活動のスタートに対応している。理系の赤堀さんは「院に進むか、就活を始めるか、迷っています」と打ち明け、文系の眞鍋さんは着々と準備を進めている。ちなみに4年生を完全なOBとするサークルも少なくないが、LUDOは4年生もライブに参加できる。
先にサークルの紹介を進めれば、設立は1998年。今年でちょうど20年目を迎えた。11月現在で部員は173人。これまでは平均して120人前後だったといい、ブームもあって1年生の数が激増している。演者とスタッフの比率は2対1。スタッフの99%は女性。早大生と他大生の比率は4対6と、他大生が上回る。
主な著名OBは、ひょっこりはん(31)、ハナコの岡部大(29)、にゃんこスターのアンゴラ村長(24)、Gパンパンダの星野光樹(26)と一平(26)、カニササレアヤコ(24)――といった顔ぶれが並ぶ。ちなみに全員が早大OBだ。
さらに今は無名でも、プロとして頑張っているOBもいる。赤堀さんによると「僕が把握している直近の先輩方だけで、少なくとも25人以上の先輩がプロに転じています」という。
その赤堀さんもプロ志望だったというのは冒頭にお伝えした通りだが、その原点は何と「小学校4年生」の時。早大に進学したのもLUDOに入部するためという筋金入りだ。
「両親もお笑いが好きで、近所にライブを楽しめるレストランがあったんです。よく家族で訪れました。僕が小1の頃、無名時代のいとうあさこさん(48)やナイツといった方々が舞台に立ち、特にナイツのお二人には可愛がっていただいたんです。それが小4になると、お二人が『M-1グランプリ2008』で3位に入賞されました。本当にかっこいいと思って、将来は芸人になると決心したんです」
小学校での成績は上位に位置し、都立の中高一貫校に合格する。さっそく漫才に挑戦したいと思ったが、進学校ということもあって相方が見つからない。それでも高校3年生の夏、よしもとクリエイティブ・エージェンシーが主催する「ハイスクールマンザイ」に出場した。
結果は関東大会で敗退に終わる。だが、知りあった他校生に「一緒に大阪に行かないか」と誘われた。「吉本総合芸能学院(NSC)に入ろうという意味かな」と思ったが、「もっと相方はしっかり探したい」と考えて断った。
ナイツの二人も創価大学の落語研究会で活躍した。赤堀さんが大学でお笑いに挑戦する方法を調べると、早稲田のLUDOが浮上した。理系科目が得意なので理工学部を受験すると現役で合格。真っ直ぐにLUDOの門を叩いた。
「演者で入部する学生の大半は、お笑いが大好きです。好きだから実演に挑戦するわけですが、入学前にお笑いをやっていた人は少数です。お笑いサークルの特徴の1つに、大半の学生が初体験という点が挙げられます。スポーツや楽器は幼い時から親しんでいた人も多く、場合によっては習熟度で序列が生じます。しかしお笑いサークルの1年生は、大多数が未経験者です。これに魅力に感じる新入生は少なくないと思います」(同・赤堀さん)
LUDOの誇りは、年7回の定期ライブだ。1年生にとって最初のライブは5月。ド素人にピン芸人のハードルは高い。新入生同士でコンビを結成。ライブに出演する中で離合集散を繰り返しながら本当の相方を見つけ、共に成長していく。
「大学生は大前提として勉強とアルバイトがあります。その上で年に7本のネタを作り、練習して完成度を高めます。好きでやっていることですが、いくら時間があっても足りません。かなり多忙です。加えて、ウケなかった時のショック、相方との人間関係、次回のライブのプレッシャーとも戦う必要があります。それでも、本番のライブでドカンとウケた時の達成感は強烈です。お笑いが素晴らしいのは、諦めずに一生懸命にネタを書いていれば、大学4年間に1本くらいは、良いネタを考え出せるところなのかなと思うんです」(同・赤堀さん)
自分たちのライブで大ウケしたネタは、より開かれた場所で演じることができる。例えば他大サークルとの「対決ライブ」だ。
LUDOなら「バトルトマホーク」(創価大学落語研究会、青山学院大学ナショグルお笑い愛好会)と、「WAKEME」(慶應義塾大学お笑い道場O-keis、明治大学お笑いサークル木曜会Z)の2つを、年に1回、自分たちで開催している。
夏休みには「国民的大学生芸人グランプリ個人戦」が開催される。全国のお笑いサークルの部員がエントリーし、優勝を目指す出場者は近年では400組を超える。舞台の上に立つのも、運営を行うのも、どちらも大学生だ。
冬休みは「NOROSHI」が開かれる。漫才、ピン、コントの3組で1チームを結成して優勝を目指す。以前は夏と同じように「国民的大学生芸人グランプリ団体戦」と呼ばれていたが、よしもとクリエイティブ・エージェンシーが参加して改称され、決勝戦の会場も新宿の「ルミネtheよしもと」になった。
大資本も大学のお笑いサークルに関心を持っているわけだが、運営は依然として学生が行っている。
[1/2ページ]