キナ臭い北方領土の“平和的”解決… 露メディアは「日本は歯舞・色丹だけでいいんだろう」
「賛」「否」それぞれの見解
こう解説するが、まず「賛」の代表である新党大地の鈴木宗男代表の見解は、
「今回の首脳会談で歴史が動いた。間違いなく平和条約締結に向けて大きく前進しました。元島民の皆さんの意見の最大公約数は三つあります。自由に島に行きたい、そして1島でも2島でも返してもらい、国後周辺の海を使わせてほしい。もちろん、4島を返してほしいという気持ちはわかりますが、それを言ったら交渉は進みません。したがって歯舞、色丹は返還してもらい、国後、択捉はロシアの主権を認め、経済特区とか特別な区域にする、プラスアルファを考えるべきです。戦争で失った領土は戦争で取り返すしかないのがこれまでの歴史でした。しかし、安倍総理の判断で一滴の血も流すことなく領土が返ってきたなら、それはノーベル平和賞ものだと思います」
他方で「否」の木村汎(ひろし)・北海道大学名誉教授は、
「14日は大ショックで夜も眠れないくらいでした」
として、こう憤る。
「今回の合意は、これまで日本が堅持してきた4島返還の可能性を自ら放棄したに近い大転換であり、大いに失望しています。そもそも安倍さんは、自分とプーチンで北方領土問題に決着をつけると言っていますが、交渉事でデッドラインを決めるのは一番いけないこととされています。その上、安倍さんの任期のほうがプーチンのそれより短い。この男は焦っている、何もせずとも条件を下げてくるのは安倍さんのほうだと、プーチンに足元を見られてしまったと思います」
このように、日本には両極端な評価が存在しているが、対するロシアの報道はどうなっているのか。先に紹介したのはそのひとつだが、他の報道も見てみると、会談前の「前打ち記事」からして、
〈日本側にセンセーション(朗報)なし〉(13日付ノーヴァヤガゼータ)
というように、「上から目線」の決めつけ報道があったのに加え、
〈日ソ共同宣言には、ソ連は平和条約調印後に2島返還の用意があると書かれていると、プーチン大統領は指摘した。しかし、同宣言には「どういう根拠に基づいてとは書かれておらず、島の主権はどちらのものになるかも書かれていない」と、プーチン大統領は強調した〉(15日付ロシースカヤガゼータ)
このように、歯舞、色丹を「渡した」としても、主権はロシアのままであるということを訴える報道もある。それはすなわち、
「財布は日本に渡したけど、中身の金はロシアのものというわけです」(木村氏)
これでは2島返還すら完全に骨抜きになってしまう……。
また安倍総理が表向きは、
「日本側は、交渉対象は北方4島の帰属問題との立場だ」
と、「建前」を貫いているのに対し、
〈(安倍総理は)16日の会見では、現時点では4島全体ではなく、その一部に集中すると語っている〉(同月17日付ノーヴァヤガゼータ)
要は、安倍総理が「4島返還を捨て去ったわけではない」と言っていることなどお構いなしに、ロシアのメディアは「結局、真剣に欲しいのは2島だけなんでしょ」と、見透かしている感が漂ってくるのである。
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