キナ臭い北方領土の“平和的”解決… 露メディアは「日本は歯舞・色丹だけでいいんだろう」
たかが4島、されど4島。北方領土は小さな島の集まりかもしれないが、日本の国益上、極めて「大きな島」である。その北方領土交渉が大きく動き出そうとしている。2島か4島か!? 柔道家でもあるロシアのプーチン大統領が仕掛けてきた寝技。日本はどう凌(しの)ぐ。
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〈平和条約交渉を加速〉(毎日新聞)
〈北方領土交渉を加速〉(産経新聞)
安倍晋三総理とプーチン大統領がシンガポールで会談した翌日の11月15日、各紙の朝刊にはこうした「フラット」な見出しが並んだ。だが、次第に「懸念」を示す見出しが目に付くようになる。
〈拙速な転換は禍根を残す〉(16日付朝日新聞)
〈「56年宣言基礎」日露に深い溝〉(17日付毎日新聞)
こうした報道の「変遷」こそが、今回の「安倍-プーチン合意」の問題点を物語っていると言えるかもしれない。それは、ロシアの報道を見ることで一層はっきりしてくる。
〈日本人がクリル諸島(千島列島)のどの島を手に入れたいかが明らかになった〉
〈日本人が欲しがっている歯舞・色丹島とは何か〉(いずれも16日付アルタプレス・ロシア)
つまり安倍総理の思惑はともかく、結局、日本が望んでいるのは「4島」ではなく「2島」なのだ、と高をくくられてしまった可能性があるのだ――。
11月14日にプーチン大統領と会談した直後、安倍総理は記者団に、
「1956年の(日ソ)共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させる。本日、そのことでプーチン大統領と合意した」
こう述べた。平和条約交渉の加速。それだけを見れば歓迎すべきことのように思えるが、こと北方領土問題に関して言うと、この「平和的」な言葉が、極めてキナ臭く「非平和的」な事態を招きかねない要素を孕(はら)んでいるのだ。
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