「顔面しゃぶ鍋」パワハラ芸能プロ社長の“素顔” 被害者が語った一部始終
サー人
――なぜ、社長はあんなことをするのか。思うに「サー人」あがり、だからです。サー人とは、サークルをやっている人のこと。大学のサークルではなくて、渋谷などでイベントを行う、イベサーですね。サー人はとにかく無茶をする。そして、飲み方が汚い。
クライアントさんがいると、いつも「面白いことしろ」と、ムチャぶりをしてくるんです。「社長が身体、張るんじゃなくて、お前が張るんだよ」と言っていました。実際、クライアントといる時にタクシーがつかまらず、社長自ら車の走っている道路に飛び出し、手を上げて車を止めようとしたこともあった。赤信号を無視して、です。そういうノリの人なんですよ。酒が入ると、若い頃のオラオラなヤンキーの顔が出てきて、歯止めが利かなくなり、とことんムチャをする。でも、クライアントさんなど、立場の強い相手には腰が低くく、ペコペコするタイプです。
自分は女の子の知り合いが多く、社長と共にプロダクションを立ち上げました。社長からすれば、僕の人脈が目当てだったのでしょう。僕が引っ張ってきた女の子が、モデルとして所属していました。あとは僕を応援してくれていた経営者の存在も大きいはず。起業にあたっての資金も欲しかったのでしょう。社長はその方からお金を引き出せるだけ引き出し、プロダクションを作りました。でも蓋を開けてみたら、その方の名前は一切なし。やっていることが詐欺師なんですよ。
直接の暴力というよりは、精神的にこちらを追いこんでくるタイプです。ミスをして会議室で2~3時間も問い詰められたこともありましたし、遅刻をして坊主にさせられ、“罰金”として10万円を払わされたこともありました。仕事中に正座を強いられたことも……。ミスといっても、そもそもミスをするように追い込みをかけてくる。ミスをしなかったとしても、「俺だったらこうした」と延々と詰めてくる。精神的におかしくなり、携帯に社長からの着信があるだけで心拍数が上がってしまっていました。
プロダクションを辞めたのは、16年の秋にファッションショーを企画した際に、「イベントを契約したのはお前なんだから」と、赤字分の約8万8千円の借金を負わされたから。これが決定打になり、その後、会社を辞めました。
ただし、優しい面もときどき見せるんです。「スタートから一緒にやってきたんだし、一緒に芸能界でのぼりつめよう」とか、うまいことを言ってくる。基本的には恐怖、でもときどき飴ですね。そうして社長に支配されていて、あらゆるおかしなことがあっても、仕事を続けていたわけです。
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