株価暴落「ライザップ」社長が慚愧を語る(上) 新規M&A凍結は「『未来』を選んだ」
空気に逆らう
また、本業のライザップは絶好調で営業利益の成長が140%を超える見込みですが、買収1年目の非上場企業を中心とした経営再建の遅れにより、業績予想を大幅に下回る見込みに。こうした事態を受け、一旦立ち止まり、抜本的な構造改革に着手するという決断をしたのです。
〈無論、瀬戸社長にとってそれは極めて大きな決断だった。逡巡する彼の背中を押したのは、カルビーから招聘した松本氏である。〉
松本さんにはライザップグループの業績の良くない会社から順に見て回ってもらいましたが、すぐに「しんどい会社がある」と指摘されました。とにかく遠慮はされない方なので、どのような場面であれ、ハッキリと言われます。買収した会社の業績が回復しないうちに新たな買収を行うのはおかしい、と。それもかなり厳しく言われました。
これまでの経営会議でも、個別のM&Aについては賛成、反対、それぞれの意見が出て、健全な議論がありました。しかし、M&A自体全てを止めるべきだと言ったのは松本さんが初めて。もちろん役員は皆驚いていました。10年以上も戦略の柱としてM&Aをやってきたので、それを全部止めた方がいいという発想の人は、ウチにはそもそもいませんでしたから。
松本さんは空気を読まないというか、空気に逆らう。これはやっぱり良いことだと私は思っています。我々はこれまで空気を作ってきたわけです。中期経営計画「COMMIT 2020」を発表して、21年3月期に連結売上高3千億円、営業利益350億円を目指す、と。そんな目標に向かって突き進んでいると、みんな空気を読んで、言いたいことを言えなくなってしまう。うまくいっている時はそれでも良いのかもしれませんが、うまくいかなくなってきた時は空気を変える人が必要。我々にとって、それが松本さんだった。
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