「今日から俺は!!」「セトウツミ」…平成最後の冬ドラマで“学ラン”大流行のナゼ
ツッパリ礼賛ではない
もっとも、「今日から!!」も馬鹿丸出しのツッパリ礼賛モノじゃない。原作のマンガの連載スタートが80年代後半で、その時点ですでに80年代のツッパリを、多少の距離をおいて冷静に眺めて面白がる具合だったし、ドラマ版も脚本・演出が、あの「HK 変態仮面」の福田雄一だもの、ツッパリ系特有の暑苦しいアタマの悪さは皆無。
「今日から!!」の三橋と伊藤の場合、たとえば「ビー・バップ・ハイスクール」のトオルとヒロシあたりより、さらに頭を使ってて、三橋に至っては喧嘩の基本戦略にしてトレードマークでもあるのが「卑怯」。正義を振りかざして卑怯に振る舞うオトナたちばっかの昨今、卑怯を掲げて正義を追い求めるコドモたちの方が見てて愉快です。
で、そういう“あのころ”なカラダでっかち男子高校生を「今日から!!」でさんざん目にした後、“いまどき”なアタマでっかち男子高校生の姿も「セトウツミ」でしっかり見られるのが、この10~12月期であるわけですが、昭和末期と平成末期という30年の差をかき消し、同じ高校生男子相棒モノであるという共通の骨格を剥き出しにしてくれたポイントがありまして、それはこの2作品の主人公たちが4人揃って着込んでる黒い学ラン。
「今日から!!」の2人は上着が長かったり短かったり、パンツ(いや、ズボン、ですね)が太かったり細かったりのイジりまくりな学生服、「セトウツミ」の2人はあまりイジってないストレートな学生服という違いはあれど、毎回きっちりな学ラン姿は、見る者に彼らが男子高校生であることを痛いほど念押ししてくれてます。
賀来賢人なんて来年三十路のアラサー男優なのに、「今日から!!」で演じてる三橋が意外と違和感なく高校生に見えちゃうのは、ひとつには彼の大怪演、もうひとつにはツッパリそのもののオッサン臭さが大きいとして、学生服という記号も無視できない。
学ランのパワーたるや、マゲつけて和服着りゃテキトーやっても時代劇(下手すりゃ大河)ってのと同じくらい強力で、逆に言うなら、「セトウツミ」が役者たちにブレザー着せてたら、少なくともワタシがこのドラマ2作の妙な関連性に引っかかることもなかったかもしれない。
そういう平成最後(まだ半年あるけど)の学ランドラマ祭、参加作品は実のところ他にもあって、この話の頭でも触れた「中学聖日記」では男子中学生(後に高校生に成長)の晶が着てるのが詰め襟の学生服。しかも、原作のマンガでは制服がブレザーだったところ、わざわざ黒の学ランに変更されてる。ネエちゃん騙し系の甘ったるい恋愛モノなら映画でもドラマでも、男子高校生はブレザーにネクタイというのが今なお相場ゆえ、違和感がキツい。
何なんだろうなぁ、いまココに来ての、この学ラン熱。多様化が進むなかで均一化も叫ばれるネジくれた世相を反映……なんて役立たずな評論はともかくとして、もしそこに潜在的なニーズとマーケットが生まれてきてるのだとすれば、ただひたすら願うのは、秋元康が息っ子クラブをAKB式にリブートさせてメンバー全員に黒い詰め襟着せ、「学生服を脱がさないで」とか歌わせる平成の終わり、あるいは次の御世の始まりが来ないことです。
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