“最期”にかかる費用は最低800万円…賢者が選ぶ「年金術」 老後を赤字にしない三原則とは
赤字生活にならないための三原則
年金制度や資産運用に詳しい、特定社会保険労務士の稲毛由佳氏が解説する。
「財源不足に悩む政府は、支給年齢を後ろ倒しにしたいという意向があってお餅をぶら下げているわけですが、本当に皆が繰り下げ受給を始めたら、国にとっては正直赤字ですよ。70歳まで繰り下げれば42%の増額。1年繰り下げるだけで8・4%というすごい利率ですから、利用しない手はない。年金は一度でも蛇口を太くしてしまえば、それが死ぬまで変わらず貰える仕組み。今後は貰える額が数百円単位で下がる可能性が高いとはいえ、いきなり明日から1割減らしますなんてことは起こらないですから、まだ働けるという方なら、できる限りの繰り下げ受給をお勧めします」
となれば、サラリーマンなら定年後、受給開始までの再雇用や再就職が勝負になる。厚労省の統計でも、男性は4人に1人、女性なら2人に1人が90歳まで生きる時代だ。
そこで今回は老後の生活に必要なお金の話。賢く増やす「年金術」を一挙に紹介してみよう。
「一般世帯が定年後の生活を送るためには、繰り下げ受給、70歳までの就労、年金を増やす仕組みの活用。この三原則を実践すれば、赤字生活にはなりません」
とは、『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる!』の著者で、ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士の井戸美枝氏だ。
「老後に備える上で大切なのは、医療や介護にかかる費用を用意しておくこと。大抵の夫婦は奥さんの方が長生きしますよね。実は、夫が亡くなり妻が一人になる“おひとりさま”の期間と、医療費・介護費が必要になる時期は被っていることが多いんです。人間は亡くなる前の1カ月間で一生にかかる医療費の半分を使う、というデータもありますが、私の試算では医療と介護に必要な老後のお金は1人あたり最低800万円。その金額を貯蓄としてキープしつつ生活していくことをベースに考えればいいと思います。夫婦なら夫の年金を先に貰って妻の年金を繰り下げたり、iDeCo(イデコ)などの確定拠出年金(DC)で積立運用しておけば、老後の手取りを確実に増やすことができる。ストックとフロー、両方の対策が必要です」
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