1千万円が激減! 銀行が勧める投資の「手数料」という落とし穴
46%が損失
銀行で投資信託を買った個人客の半分近くが、運用損失を出している――金融庁が今年7月に公表した分析結果がいまだ耳に新しいという人もいるはずだ。主要銀行9行と地方銀行20行の窓口で購入した全ケースで、顧客の「手取り」を試算したところ、46%もの人が損をしていたというのだ。
さらに11月7日、金融庁が発表した最新分析でも36の金融機関で投資信託を購入した顧客のうち4割の運用損益がマイナスだったことが明らかになった。
もちろん投資はリスクが伴うものだが、株価が上昇基調で、政府が積立NISAを推奨するなど「貯蓄から投資へ」という流れのなかで、多くの人が予想外の結果を目の当たりにしたことになる。
「思っていたほど儲からない、その理由は手数料にあります」と解説するのは、経済ジャーナリストの荻原博子さんだ。
「見落とされがちですが、購入した投資信託を運用していく限り、顧客は手数料を払い続けなくてはなりません。じつはその手数料こそ、いま銀行を始めとする金融機関が喉から手が出るほど欲しいものなのです」
どういうことなのか。銀行が手数料を「喉から手が出るほど」欲しがる実態について、荻原さんの新刊『払ってはいけない 資産を減らす50の悪習慣』から抜粋しよう(以下、「」内は同書より)
アベノミクスに苦しむ銀行
「日銀のマイナス金利政策が続く中、金融機関の収益は、真綿で首を絞められるように悪化しています。特にその傾向は、銀行に顕著に見られます。
アベノミクスは、5年間で企業の内部留保を100兆円以上も増やしました。結果、多くの企業が、銀行からわざわざお金を借りなくてもやっていけるようになりました。
ところが日銀から銀行へは、貸し出しを増やせとばかりに国債を買い上げたお金が流れてくる。
アベノミクスが始まってから、すでに450兆円近いお金が日銀から銀行に流れてきましたが、貸し出しできない銀行は、やむをえずに再びそのお金を日銀の当座預金口座に預けています。
それが390兆円にもなり、貸し出しに回らないことに苛立った日銀は、これ以上日銀の当座預金にお金を預けたら、預けたぶんのお金から手数料を取ることに。
これが、マイナス金利です。
ところが、手数料を取ると言われたにも拘わらず、貸し出しできない銀行は、仕方なくお金を日銀に預け続け、その預け入れ金は2年で約100兆円も増えました。なぜなら、日銀がお金を流すだけでなく、皆さんが、お金を預金として銀行に持ってくる分もあるからです。
けれど運用先がないので、わざわざ手数料まで払って日銀に預け続けざるをえない。
そこで、今、銀行が必死になっているのは、皆さんが預けようと持ってきた預金を、いかに預金ではなく投資商品に振り向けようかということです」
顧客による預金と投資、銀行にとってこのふたつは決定的に違うのだという。投資してもらえば、手数料を払って日銀に預けなくてもいいだけでなく、手数料という名の収入が得られるため二重の意味で「美味しい」のだ。
手数料3%を30年間払うと……
荻原さんが続ける。
「そのため、銀行は必死で投資を勧めますが、そもそも銀行の窓口で投資商品など買ってはいけません。なぜなら、手数料が高いからです。
銀行の窓口で販売している投資商品の手数料は、3%前後というものが主流。
もちろん投資すれば、大きく増える可能性もあるが、減る可能性もある。では、1千万円を投資で預け、増えもせず、減りもしなかったら30年後にはどうなるでしょうか。
『増えもせず、減りもしなかったら、1千万円は1千万円のままだろう』と思ったら大間違い。30年間、年3%の手数料を引かれ続けると、なんと1千万円は401万円に目減りします。
窓口で投資相談するというのは、こうした商品を紹介されるということ。まさにカモがネギ背負って鍋に飛び込むことです」
だったらどうしたらいいのか、と思わず言いたくなる人に、荻原さんは明快なアドバイスを送っている。
「銀行の窓口に限らず、今はどこの金融機関も、経営が青息吐息の状況です。
だとしたら、私たちは金融機関に狙われているという自覚を持ったほうがいい。
そして、もし投資がよくわからないとか、投資の必要性をあまり感じないというなら、金融機関にはあまり近づかないほうがいいかもしれません」